2024年09月19日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「中国で何が起きているのか」(19) ペリー・リンク プリンストン大学名誉教授

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会見リポート

アナコンダゆえの自己検閲

奥谷 龍太 (NHK解説委員)

 リンク名誉教授は会見冒頭、この日の朝伝えられた悲しいニュースから話を始めたい、と切り出した。中国・深圳の日本人学校の児童が刃物を持った男に襲われて亡くなった事件だ。「アメリカ人として、この事件が日本と中国が対決する構図の中で見られるようになってほしくない。むしろ日本人と中国人が、国民感情を利用して統治を最大化するため普通の人々が非理性的な恨みを抱くように仕向けている中国の政権に、どう立ち向かうかを考えるきっかけになってほしい」。優しく鋭い言葉に心を打たれた。

 会見の本題では、一般の中国国民が受けている言論の自由への抑圧についての洞察を4点にまとめて述べられた。①それは部屋のシャンデリアにとぐろを巻くアナコンダのようなもので、無言で動かないが皆がその存在を知っているため、弾圧される恐怖から、普段使う言葉に自己検閲をしており、しかも線引きが曖昧なため必要以上に検閲しているという。②そして普通の暮らしを送るために自己検閲がごく日常的なことになっており、③この結果、同じ一人の人間の意識の中で言葉に注意して話す自分と本音の自分が分裂している。④そしてこの状態がマイノリティーだけでなく一般の中国人にも苦痛を与えているという。アナコンダの比喩も、同じ人間の中で意識が分裂しているという指摘も、長年の研究と経験に裏打ちされた説得力があると感じた。

 1980年代の民主化運動の当時、多くの知識人と交流を重ねたリンク名誉教授に、中国の学生や若者が国の未来や理想を語る風潮はいつかまた戻ってくると思うかと質問してみた。リンク氏の答えは明快で印象的だった。「ここ数年そういう風潮を少しずつ感じるようになった。とくにここ東京、そして(教授の住む)カリフォルニアで滞在している中国の若者との交流からそれを感じる」


ゲスト / Guest

  • ペリー・リンク / Eugene Perry Link, Jr.

    プリンストン大学名誉教授 / Emeritus Professor of Princeton University

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:19

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