会見リポート
2024年09月12日
16:00 〜 17:30
10階ホール
「中国で何が起きているのか」(18) 江藤名保子・学習院大学教授
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会見リポート
「未来の功績」で正当性担保
渡辺 哲郎 (共同通信社外信部)
江藤教授は記者会見で、中国の習近平指導部が「未来の功績」について主張を強めているとの見方を示した。自らの統治の正当性を担保するためで、中国の今を読み解く上での重要な視点だとした。
中国は7月の共産党中央委員会第3回総会(3中総会)で、建国80年となる2029年までに習国家主席が掲げる発展モデル「中国式現代化」の改革の任務を成し遂げると決定した。こうした動きを例示し、習指導部は自らの統治の下、未来が「素晴らしいことになると決めてしまっている」と指摘した。
だが足元では高齢化が進み、若年層の失業率は高止まりしている。過剰な集権体制の前では、耳に痛い提案をするのも難しい。必要な政策が打ち出されず、外国企業の投資も逃げ出しているという。
習指導部は「素晴らしい未来」に向け都合の良いナラティブ(物語)やレトリックを作り上げ、独裁体制の良さを国民に無理やり信じさせようとしている。経済の先行きは明るいとする「光明論」を掲げるだけで、不況の打開策は示せていない。世論統制も厳しくなっているとの分析は同感だ。
党内部に潜在的な不安感があるとも指摘した。22年の党大会では習氏が不動の権力と権威を固めたことを意味する言葉「二つの確立」が党規約に盛り込まれなかったが、習氏への権力集中に反対の声があった形跡だとした。
江藤氏は会見の締めくくりに「複雑な状況を単純化しないで考え、中国と付き合うことが大切だ」とも述べた。
中国は何を考えているのか。その答えは見えない。だが主語を大きくして「中国は―」と語ったり、理解したつもりになったりするのは違う。「虚心坦懐に考える」。江藤氏が揮毫した言葉が、中国と向き合う上で大切だと感じた。
ゲスト / Guest
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江藤名保子
学習院大学教授
研究テーマ:中国で何が起きているのか
研究会回数:18