2024年11月18日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「家族の変容と日本経済」林伴子・内閣府政策統括官

会見メモ

内閣府政策統括(経済財政分析担当)の林伴子さんが「家族の変容と日本経済」をテーマに登壇。データをもとに家族の姿がどのように変容してきたのか、日本経済にどのような影響を与えているのかを解説した。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信社)


会見リポート

「もはや昭和ではない」

石田 敦子 (毎日放送東京報道部)

 「もはや昭和ではない」。林氏が取りまとめた『2022年男女共同参画白書』のキーワードだ。ここでいう昭和とは、高度経済成長期から長らく続いた「家族が社会保障の役割を担い、夫は仕事、専業主婦が家事、育児、介護をする」社会モデルを指す。  

 林氏はずっと経済財政政策を専門としていたが、2020年に「全く経験がなかった」男女共同参画局長に就任した。時はコロナ禍、社会の最も脆弱な存在の一つとして単身やひとり親の女性の困窮に気づいたことが白書の作成につながった。

 林氏は家族が変容しているにも関わらず制度や慣行が昭和から変わっていないために生じているひずみを様々なデータで示し、女性がおかれている理不尽な状況がもたらす社会課題を二つ明確化した。一つ目は「ひとり親家庭の相対的貧困率」、二つ目は「地方からの女性流出と未婚男女比のゆがみ」で、いずれも男女賃金格差や雇用、教育などにおいて女性が不利な状況に置かれていることが背景にあり、世界的にも大きく後れを取っていることが示された。

 現在大きな社会的関心事である「年収の壁」では、専業主婦優遇と言われている「第3号被保険者制度」について、林氏は離婚後の女性が困窮に陥るリスクとなること、夫の所得が高い女性ほど専業主婦が多いため所得分配としては逆効果であるとして、見直しを検討すべきと話した。また「選択的夫婦別姓」についても、通称使用拡大は、納税、銀行口座開設、パスポートなど身分証明において限界があるとした。

 昭和が終わってもう35年。この間少子高齢化は加速し、相対的貧困率はOECD加盟国の中央値を4%近く上回る。それが今の日本だ。林氏は男女共同参画局長時代、職員を男女半々にして取り組み、難しい課題を解決してきたという。昭和に欠けていたのは「多様性」だ。日本の現状打開のヒントはそこにある。


ゲスト / Guest

  • 林伴子 / Tomoko HAYASHI

    内閣府政策統括官 / Director-General, Economic Research Bureau (Chief Economist of Government)

研究テーマ:変わる『家族』

研究会回数:5

ページのTOPへ