2024年08月19日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「自治体消滅にあらがう」(3) 平井伸治・鳥取県知事

会見メモ

「国立社会保障・人口問題研究所」は鳥取県の人口が2050年に今より27%減少し40万人あまりになると推計した。 平井伸治知事が、県が取り組む子育て支援策の成果と今後の課題、労働力が東京をはじめとする県外に流出することへの対策、女性活躍推進に向け展開する支援の概要などについて話した。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信社)


会見リポート

昭和意識捨て女性流出阻止

大林 尚 (日本経済新聞社編集委員)

 鳥取県の人口は53万人あまり。全国の都道府県で最下位だ。日本の総人口は2008年の1億2808万人をピークに直近は1億2385万人に減っている。失礼を承知で物差しに使わせてもらうと、16年間に鳥取県が8回も消滅した計算になる。

 5期目を迎えた平井知事の「人口減少打破への挑戦」は、政策総動員そのものだ。過疎県知事に共通する悩みは人口の自然減と社会減に同時に見舞われている点だ。高齢者の増加は死亡数の増加に直結し、若い世代の流出で出生数が減少する。社会減が自然減に拍車をかける悪循環である。

 平井氏は2010年に「子育て王国とっとり」を宣言し、県内の合計特殊出生率は1.6前後を保ってきた。全国では今年1.2を下回るのが確実視されている。コロナ禍の22年に出生数が増えた唯一の県になったのは特筆に値しよう。年齢層の高い夫婦が第2子、3子をもったのが寄与した。不妊治療への補助金、鳥取ならではの子育て環境の素晴らしさをアピールした。

 もっとも若い女性が大都市圏の「ブラックホール型自治体」へ吸い寄せられるのを止めるのは難題だ。東京圏は女性の賃金水準が高く、男女差が小さい。一方、差が大きい(低いのは当然、女性のほう)自治体の一つが鳥取県だ。

 県庁・市町村役場の職員、教職員などは男女差がさほど問題になるまいが、民間企業には昭和の意識から抜け出せない経営者が多いのだろう。平井氏は、女性に働いてもらわないと会社の存続が危ぶまれるという意識をもつのが大切だと語った。

 鳥取県にスターバックスコーヒーが出たのは15年。全国で最も遅かったが、今はそれを逆手にとり、スタバならぬ地場資本の「すなば珈琲」が活況を呈する。砂丘に引っかけた店名だ。総人口が加速度的に減り続ける日本で、平井氏の政策総動員はほかの過疎県知事にとっても一つのモデルになる可能性を感じた。


ゲスト / Guest

  • 平井伸治 / Shinji Hirai

    鳥取県知事、前全国知事会会長 / Governor, Tottori Prefecture

研究テーマ:自治体消滅にあらがう

研究会回数:3

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