会見リポート
2024年06月17日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「中国で何が起きているのか」(14) 宮本雄二・元駐中国大使
会見メモ
中国共産党は7月に第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)を開く。昨年秋とみられていた3中全会の開催はなぜ遅れたのか。不確実性を増す中国の内政は、米国との関係をはじめ外交にどんな影響を及ぼすのか。日中間には福島第一原子力発電所の処理水や邦人拘束の問題など、なお多くの懸案が横たわる。日本は中国とどう向き合えばいいのか。2006年から10年まで駐中国大使を務めた宮本雄二さんに聞いた。
司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)
会見リポート
経済優先を打ち出せるか
野崎 亮 (共同通信社経済部)
元駐中国大使の宮本雄二氏が、7月に開かれる中国共産党の重要会議第20期中央委員会第3回総会(3中総会)を中心に「中国情勢と日中関係」について分析した。
中国では経済不振が続いているが、2022年10月の第20回党大会以降に経済政策の調整がなされていないと説明。3中総会で「(経済)発展を主とし、国家安全を従とする」などと優先順位が付けられるかが焦点だと語った。開催が遅れた理由は、習指導部のイデオロギーを重視する体質が手足を縛り、経済と政治の矛盾が生じているためだと述べた。
中国の地方政府が経済の現場で、日本の投資誘致に必死になっている一方で、国家安全部門による、反スパイ法による拘束などで、外国企業の足が遠のき、経済にマイナスの影響がでていると指摘。政治と経済の調整の欠落が、習指導部の「最も重大な欠点だ」と強調した。習氏が3中総会でのこうした順位付けに納得したと聞いたが、まだ決着したわけではないとも感じているという。
日中関係については、劉建超・中国共産党中央対外連絡部長が5月末に訪日した際に「中国発展のために良好な外部環境をつくるのが外交の任務だ」と発言したことに着目。自尊心や立場を宣伝するような戦狼外交ではないとして中国が「まともな外交に戻った」との認識を示した。関係改善に日本が動けるかだとして、早期の日本の外相による訪中を求めるとともに、戦略的互恵関係という言葉に鍵があるとも述べた。
また台湾情勢に関し、宮本氏は日本側での「台湾有事は日本有事という言い方は改めてほしい」と表明。日米安全保障条約に基づかずに「米国と関係なく出て行くコンセンサスは日本社会にはないと思う」と述べ、中国側の誤解は避けるべきだとの見解を示した。米国などと協力して「台湾の現状維持をいかに続けるか努力すべきだ」と明言した。
ゲスト / Guest
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宮本雄二 / Yuji MIYAMOTO
元駐中国大使 / former ambassador to China
研究テーマ:中国で何が起きているのか
研究会回数:14