2024年06月03日 14:00 〜 15:00 10階ホール
松本正義・関経連会長 会見

会見メモ

関西経済連合会の松本正義会長(住友電工取締役会長)が「マルチステークホルダー資本主義の考え方や、求められるコーポレートガバナンスのあり方」をテーマに会見。2025年に控える大阪・関西万博に関する質問などにも応じた。

 

司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員長(日本経済新聞社)


会見リポート

「三方よし」の経営に光を

升田 祥太朗 (読売新聞大阪本社経済部)

 「買い手よし、売り手よし、世間よし」の「三方よし」は、江戸時代に全国を行商した近江商人の教えだ。関西では、商売の模範として重んじる企業は多い。近年は自社株買いなど株主還元を重視する風潮が強まるが、松本氏は「わが国が本来強みとしてきた経営理念に光をあてるべきだ」と語り、多様なステークホルダーに配慮する「三方よし」の必要性を説く。

 バブル経済崩壊後の「失われた30年」で、日本企業は従業員の給与や設備投資にお金を回さなくなった一方、自社株買いや配当金といった株主還元は増えた。この背景について松本氏は、3カ月ごとの四半期報告書や四半期決算短信の開示義務化、「コーポレートガバナンス・コード」の策定といった流れと無関係ではないと指摘する。

 関西経済連合会は2023年9月にまとめた提言で、株式を長期保有する株主への優遇措置や、自社株買いに対する規律の導入を求めた。行き過ぎた「株主第一主義」は賃上げや設備投資の後退を招く、との懸念がある。松本氏は「安易な自社株買いは中長期的な企業価値向上の取り組みを損ねる」と強調した。

 関経連は、株主だけでなく、顧客や従業員、取引先、地域社会といった幅広いステークホルダーを重視する「マルチステークホルダー資本主義」を提唱する。「三方よし」に通じる考え方だ。

 見本となる日本企業を問われた松本氏は、「(自身が会長を務める)住友電気工業に決まってる」と自負をのぞかせた。住友電工は経営計画で、業績目標に加えて、インフレ率を超える賃上げや、税引き後利益1%を目安に社会貢献活動への寄付などを掲げる。

 先に触れた関経連の提言には、中部や中国など六つの経済連合会も名を連ねた。「三方よし」が日本企業の代名詞になるのか注目したい。


ゲスト / Guest

  • 松本正義 / MATSUMOTO, Masayoshi

    日本 / Japan

    関西経済連合会会長 / Chairman, Kansai Economic Federation

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