2024年06月18日 15:30 〜 17:00 9階会見場
山川宏・宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事長 会見

会見メモ

21世紀初となる有人月面探査に向けて、米国は「アルテミス」計画をスタートさせた。

日本はいち早く同計画に参加を表明し、日本人宇宙飛行士を月に送ることで米国NASAと合意。小型月面探査機「SLIM」のピンポイント着陸、次期主力ロケット「H3」の打ち上げに成功した。

日本の宇宙開発をリードするJAXAの山川宏理事長が日本の宇宙開発や宇宙ベンチャー企業の最新動向などについて話した。

 

司会 倉澤治雄 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

役割は拡大、事業も多角化

加藤 遼也 (読売新聞社科学部)

  宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年、月面探査機「SLIM」の月へのピンポイント着陸やH3ロケット2号機の打ち上げに成功した。研究開発・実施機関としての役割を着実に果たしているが、山川宏理事長は会見でこう述べる。「JAXAの役割は拡大している。技術開発だけではなく、それをどう利用するかという観点が非常に重視されている」

 防災・災害対応や環境問題、安全保障など、宇宙開発利用の拡大に伴い、従来の研究開発に加えてJAXAが担う事業は多角化した。例として挙げたのが、今年1月の能登半島地震での取り組みだ。気候変動観測衛星「しきさい」や地球観測衛星「だいち2号」などの観測で、火災や地殻変動を検出した。7月1日にH3ロケットで打ち上げられた「だいち4号」も高精度な地球観測を担い、衛星データを活用した課題の解決などが期待される。

 また、産業界との更なる連携強化も狙う。「産業、アカデミア、国際パートナーを結びつける『ハブ』の役割だ」と山川理事長。H3ロケットやイプシロンSなど、「開発したものはできるだけ早く民間にお渡ししたい」と早期に民間へ運用を移管する見込みだ。国内にはスペースワン社の開発する「カイロス」などのロケットもあるが、「棲み分けによってお互いが市場を確保することを目指す」としている。

 7月から公募を開始する政府の宇宙戦略基金では、JAXAが運用を担う。山川理事長は産業界・大学などが主体となって研究開発を進めることを強調しつつ、「最終的には宇宙関連市場の活動だけではなく、日本全体としての宇宙活動を活発化するのが大きな目標だ」とした。基金に関わる人材についても言及し、「JAXAとしてファンディングの仕事は初めて。様々な経験を持つ外部からの助けを得てスタートしようとしている」と述べた。


ゲスト / Guest

  • 山川宏 / Hiroshi YAMAKAWA

    JAXA(宇宙航空研究開発機構) / Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA)

    理事長 / President

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