2024年05月16日 16:30 〜 18:00 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(13) 川島真・東京大学大学院教授

会見メモ

中国政治・外交を長く研究してきた東京大学大学院教授の川島真さんが「習近平政権の対外政策ー内政との一体化ー」をテーマに話した。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)


会見リポート

習政権「強靭さ失われた」

森 保裕 (共同通信社論説委員)

 中国の習近平政権が米国との競争の中で、どのような戦略的な外交を展開しているか詳細に分析し、習1強体制下の内政との関係を論じた。

 2049年(建国100年)までに「中華民族の偉大な復興」を目指す習政権の基本政策は「米国に追い付き追い越す」「台湾統一」と分析。米中競争の中で台湾は①地政学的軍事安全保障②先端技術③民主主義の価値観―の3点で重要と述べた。

 ロシアは「最も重要なパートナー国であり、ロシアの安定は極めて重要だ」とし、万一、ロシアで革命が起きて北大西洋条約機構(NATO)メンバーになったり、ロシア全体が混乱に陥ったりすることは中国にとって「最悪の事態」とした。

 巨大経済プロジェクト「一帯一路」について、有事で中国の東側が使えなくなった際、中央アジアや東南アジア経由、シーレーンでエネルギーや物資の供給を確保するために重要だと解読した。

 5月の習氏のフランスとセルビア、ハンガリー歴訪は対米けん制と欧州での影響力拡大が狙いとし「フランスは米国と違う独自外交を進めそう」「ハンガリーはNATOの中で最も中国寄り」「セルビア訪問はNATO軍の在ユーゴスラビア中国大使館誤爆25年に合わせた」と説明した。

 日中関係については①日中韓サミットで、ある程度改善を図るが、そこで止まる②東・南シナ海や台湾を巡る中国の政策は変わらない③日本人の対中感情は悪く、岸田政権は改善に動きにくい④中国は日台関係の強化に強い警戒感を持つ―とし、当面、改善は難しいとの見通しを示した。

 内政について、習氏は1強体制を進めてきたが、中央・国家の政策が地方・社会に浸透していかず、政権の強靱さ(レジリエンス)は胡錦濤前政権に比べて失われたと分析。厳しい言論・思想統制の中で、国民は不満を募らせ、日本など海外への移住が増えている現状を紹介した。


ゲスト / Guest

  • 川島真 / Shin KAWASHIMA

    東京大学大学院教授 / Professor of Graduate School of Arts and Sciences,Tokyo University

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:13

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