2024年03月18日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「働く人材クライシス」(6) 島崎謙治・国際医療福祉大学大学院教授

会見メモ

厚生労働省の社会保障審議会医療部会委員や「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の構成員を務める。

医師の働き方改革の概要や影響について、幅広に語った。

「働き方改革は労働時間の短縮に矮小化されているきらいがあるが、各医療機関の労働生産性の向上、役割分担と連携の強化による地域全体の生産性が肝要」「地域医療構想の実現や医師の偏在是正につなげることが必要になる」

 

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)

 

※YouTubeでのアーカイブ配信は9月30日(月)までの期間限定となります。ご了承ください。


会見リポート

医師不足対策、本命は「再配置」

山口 聡 (日本経済新聞社編集委員)

 かなり前から「日本の医療は医師の献身的な働きによって支えられている」と指摘されてきた。2000年代に入ると、過酷な労働環境や世間の無理解から病院勤務医が次々と辞めていき、医療は崩壊すると言われた。最近では新型コロナウイルス感染患者が押し寄せて、一部の病院で医師が疲弊し、医療が機能しなくなるとの危機感が高まった。

 ただ、いずれのときも、喉元過ぎれば熱さは忘れられたかのようだった。医療界や医療行政の側から何かを強制的にでも変えようとする大きな動きは出てこず、患者の意識も変わらなかった。

 ところが、長時間労働の是正を柱とする「働き方改革」の大波が医療界にも押し寄せる。島崎謙治・国際医療福祉大大学院教授は「これまでは医師の過重労働という巨大なスポンジで膨大な医療ニーズを吸収してきたが、もうそれはできない」と語る。対応策は①患者が我慢する②医師数を増やす③医師や病床などの医療資源を地域の実情に応じ効率的に再配置する――の3つ。患者に過度な期待はできず、人口減で医療需要が減っていくなかで医師数も増やしにくい、島崎教授の本命は③だ。

 医療資源の再配置も簡単なことではない。日本の医師はどの診療科に就こうが、どこで診療しようが基本は自由。病院も自らの経営のことだけを考えてきたからだ。実は政府も地域ごとに将来の医療需要を推計し、病院の役割分担などを進める「地域医療構想」や一部の診療科や都会に偏る医師の「偏在対策」を打ち出し、「働き方改革」と合わせて三位一体の改革と称してきた。ところが現実は「三位一体」どころか「三すくみ」と揶揄(やゆ)されるほど進んでいない。島崎教授は「働き方改革の実施でやっと地域医療構想も偏在対策も進むのでは」と見る。「働き方改革」が医師の過重労働を防ぐだけでなく、将来にわたって国民が安心できる医療体制をつくることにつなげられるかが問われている。


ゲスト / Guest

  • 島崎謙治 / Kenji SHIMAZAKI

    国際医療福祉大学大学院教授 / Professor, International University of Health and Welfare

研究テーマ:働く人材クライシス

研究会回数:6

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