2024年03月18日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(10) 柯隆・東京財団政策研究所主席研究員

会見メモ

東京財団政策研究所主席研究員の柯隆さんが登壇。11日に閉幕した全国人民代表大会についての所感を述べるとともに、不動産問題を中心とする中国経済、台湾問題などについて幅広く語った。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)

 

 


会見リポート

発展の速さ 制度置き去り

加藤 千洋 (朝日新聞出身)

 今春の中国の全人代(国会に相当)は、不動産不況と地方政府の隠れ債務といった難題に中国政府がどのような対策を打ち出すか注目された。

 柯隆氏は「何もサプライズがなかった」とし、経済は「失速しつつある」との見立てを披露。その根本原因は「この間の速すぎた発展に(経済体制面などの)制度づくりが追いついていないことがある」と指摘した。

 全人代では李強首相の会見が中止され、海外メディアから「政治の透明性が損なわれる」との不満が出た。柯隆氏は「首相会見はマーケットへのメッセージになってきたが、それが無いことで今年のビジネスは難しくなる」と経済面への影響にも言及。また今年の成長率目標が5%前後となった点については、「昨年は5・2%成長を達成と発表されたが、本当だろうか」と提起。「高くて1・5%」との米シンクタンクの推計値を紹介しつつ、投資・消費・輸出の伸びが勢いを欠いた状況から「どちらが体感温度に近いだろうか」と問いかけた。

 また習近平政権10年余の歩みを振り返り、2013年発足当時は「供給過剰」が問題で、過剰生産能力を対外移転する「一帯一路」が打ち出されたが、現状は「需要不足」が問題で、コロナ禍に加えて「厳しい締め付けによる民営企業の弱体化が背景にある」と分析した。

 会見は日中関係に関して「おやっ」と思える発言で締めくくられた。

 東京・銀座に北京から若手の知識人らに支持される書店が進出したことを紹介。書籍販売だけでなく多彩な交流イベントも開催する新しいタイプの店舗空間で、すでにパリ、ロンドン、ベルリンなどにも進出し、シンガポールをハブに「グレーター・チャイナ・ネットワーク」が形成されていると指摘。「こうした動きはヒト・カネ・情報という面で中国と日本を結ぶ新しいネットワークになる可能性がある」と期待感を込めて語った。


ゲスト / Guest

  • 柯隆 / Ke Long

    東京財団政策研究所主席研究員 / Senior Fellow, The Tokyo Foundation for Policy Research

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:10

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