2024年02月20日 13:30 〜 14:30 9階会見場
「能登半島地震」(7) 山本佳世子・電気通信大学教授

会見メモ

今回の能登半島地震ではインフラ・通信網に深刻な被害が出る一方で、リモートセンシング技術や地理情報システムなどさまざまな情報通信技術が投入され、被害の把握、被災地支援に貢献したとされる。

電気通信大学教授の山本佳世子さんが、どのような情報通信技術が活用されたのかを過去の災害発生時との相違点などから解説するとともに、ソーシャルメディアやマスメディアによる情報発信の課題、フェイク対策についての考え方などについても話した。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

 


会見リポート

「情報的孤立」も想定した対策を

伊藤 崇 (読売新聞社社会部)

 能登半島地震では、幹線道路が軒並み寸断され、被災地が「陸の孤島」と化す事態となった。情報通信網の被害も甚大で、光ケーブルの切断などで携帯電話が使えず、情報過疎に陥った孤立集落もあった。

 山本教授によると、通信網の災害対応は、東日本大震災以降、強化されてきた。今回の地震では、移動基地局車が一気に投入され、国内の大規模災害では初となる米衛星通信サービスも活用された。

 それでも、携帯大手各社の応急復旧作業がおおむね完了するまで2週間以上を要した。首都直下地震や南海トラフ地震では、通信障害がより長期に及ぶ恐れがある。山本教授は「情報的に孤立することも想定し、訓練しておくことが必要だ」と指摘した。

 一方、今回の地震でも大きな問題となったのが流言・デマだ。SNS上には地震直後から、偽の救助要請など様々な偽情報が飛び交った。山本教授は、市民一人ひとりが災害時の流言・デマの特徴を知っておくことが重要だと強調。流言・デマを打ち消すための研究中のアイデアも紹介した。

 私は社会部災害担当として、元日から能登半島地震の取材に当たってきた。被害の甚大さを伝えるニュースを連日報じる中で、課題として感じたのが「被災地の役に立つ情報を発信できているか」だった。

 その点について、山本教授にどう思うか会見で質問したところ、「被災地に支援に向かおうとする個人の方に少し止まってもらうような流れを、(報道を通じて)作っていただけると良かった」との意見をいただいた。

 石川県はSNSなどで、能登方面への移動は緊急車両の通行の妨げになるから控えるよう呼びかけていた。こうした被災地の声をくみ取り、後押しする報道ができていたか。いま一度、今回の報道を振り返り、今後の糧としたい。


ゲスト / Guest

  • 山本佳世子 / Kayoko YAMAMOTO

    電気通信大学教授

研究テーマ:能登半島地震

研究会回数:7

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