2024年02月15日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「大学どこへ」(8) 宮武久佳・東京理科大学嘱託教授

会見メモ

宮武久佳さんは共同通信社での25年の記者生活を経て、実務家教員 (社会人教員) に転身した。

2020年に刊行した著書『「社会人教授」 の大学論』(青土社)では、近未来の大学のあるべき姿として、在学期間の延長、飛び級入学を増やすこと、初等教育の立て直し――など6つから成る提言をまとめている。

社会人教員として、今の大学、大学生、社会をどうみてきたのか、大学はどうあるべきなのかについて語った。

 

司会 元村有希子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

 


会見リポート

変わらない大学に「喝!」

元村有希子 (シリーズ担当企画委員 毎日新聞社論説委員)

 近年、退潮が指摘される日本の研究力。その源泉である大学の現状を分析する「大学どこへ」シリーズの8回目に、宮武久佳・東京理科大学嘱託教授を招いた。

 ゲスト陣では異色のメディア出身。共同通信社経済通信局、大阪社会部、国際局海外部などで記者経験を積み、2009年、52歳で横浜国立大学教授に転身した。「社会人教員」の視点から、大学が陥っている構造的な問題を解説した。

 端的に言えば「勉強しないでいい日本の大学」。カリキュラムは研究者養成を念頭に作られており、世界で活躍できる人材を育てる視点は十分でない。

 だから学生も「卒業できればいい」。「大卒のブランドでいい会社に入ってくれれば」と考える親と、「新卒は下手に専門を深めなくていい」という企業の思惑が一致し、気がつけば世界標準から大きく劣後した大学が800近くもある国になってしまった、という。

 危機的状況をどう打開するか。宮武氏は再生に向けた6項目の提言を示した。

 印象深いのは「20歳前後の若者に大学を独占させるな」という提言。卒業し就職した後も大学院に通い、そこでの学びを仕事に生かすなど、社会と大学を行き来しながら、生涯を通してつながり続けられたらいい。

 そのためには、大学がもっと地域に開かれた存在になる必要がある。入試に「社会人枠」を設ける、住民も参加できる講座を開くなど、知恵を絞ってはどうか――。

 「改革の遅さは企業並み」「まず身内で『センセ』と呼び合う文化を見直しては」と、宮武氏は大学に改革を迫った。

 大学は、その閉鎖性から「象牙の塔」と呼ばれる。社会と大学を隔てる塀の、中でも外でもない「塀の上」からの叱咤激励と受け止めた。


ゲスト / Guest

  • 宮武久佳 / Hisayoshi MIYATAKE

    東京理科大学嘱託教授

研究テーマ:大学どこへ

研究会回数:8

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