2024年01月18日 13:00 〜 14:00 10階ホール
「能登半島地震」(1) 廣井悠・東京大学先端科学技術研究センター 教授

会見メモ

「能登半島地震」で多数発生した地震火災の中でも、輪島市の中心部「朝市通り」周辺で出火した火災は甚大な被害をもたらした。

日本火災学会のメンバーとして現地調査に入った東京大学先端科学技術研究センター教授の廣井悠さんが、現時点で明らかになっている様々なデータや現地調査の結果を踏まえ、「朝市通り」周辺での地震火災について考察した。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

倒壊建物が延焼を助長か

榊原 智康 (東京新聞社会部)

 能登半島地震では、輪島市中心部の観光名所「朝市通り」周辺で大規模な火災が発生し、多くの犠牲者が出た。都市防災の第一人者である東京大の廣井悠教授が、現地調査の結果を報告し、今回の火災から得られる教訓を語った。

 住民への聞き取りやヘリ映像などから、地震直後に朝市周辺エリアの南西部の1点から出火したと分析。風は強くなかったとし、延焼速度は新潟県糸魚川市の大規模火災よりは遅く、1時間あたり25~40㍍程度だったと推測した。

 大規模な火災になったのはなぜか。「古い木造密集市街地での火災だった」とし、燃えやすい市街地だったことを要因の一つに挙げた。建物倒壊で木材が道路にはみ出し、延焼を助長した可能性もあるとした。

 もう一つの要因は、消火活動が難しかったと説明。住民への聞き取りでは「道路が被害を受け、消防車の到着が遅れた」「地震の影響で消火栓や一部の防火水槽が使えなかった」「川の水量が低下し、川の水を使った放水も難しかった」などとの証言が得られたという。

 「出火件数が1件で、必ずしも強風ではない状況でも、地震時はこのように大規模延焼に至る危険性が顕在化した」と強調。今回の地域のように津波リスクのある市街地は日本にたくさんあるとし、「地震時の対応が難しくなることを踏まえて、今後の都市造りを再検討する必要がある」と語った。

 ゲストブックには「冷静」と揮ごうした。災害直後の対策の見直しでは、過剰に安全を重視する方針になりがちという。朝市通り周辺は「木造の家が町並みの景観となり、それが文化的資源となり、観光客を呼び込む魅力でもあった」と指摘。「魅力や活力などを損なわれない形の安全性の取り扱い方を、冷静に考える必要がある」と、安全だけでなく、暮らし続けていける街にする視点からの復興の重要性を訴えた。


ゲスト / Guest

  • 廣井悠 / U HIROI

    東京大学先端科学技術研究センター教授 / Professor, Dept. of Urban Engineering, Tokyo University

研究テーマ:能登半島地震

研究会回数:1

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