2024年02月16日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「大学どこへ」(9) 柳沢幸雄・北鎌倉女子学園園長、元開成学園高等学校校長

会見メモ

開成高校の元校長で現在は北鎌倉女子学園の学園長を務める。東京大学、ハーバード大学、開成高校で、それぞれ10年以上の教育歴を持ち日米の教育現場に詳しい。

大学の評価は就職で、高校を含む中等教育の評価は大学への合格実績で決まる「入口主義」の図式で、企業が大学名を評価基準として終身雇用の正社員を採用する限り、「大学生が勉強するインセンティブはない」。

大学の入試改革や大学教員の雇用形態を見直すことの必要性を訴えるとともに、閉塞感を打破するために「現代の遣唐使」として毎年1000人の学部学生に奨学金を給付し、海外に送り出すべきと提唱した。

 

司会 倉澤治雄 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

高校から見える大学の風景/「現代の遣唐使」を提唱

倉澤 治雄 (シリーズ担当企画委員 日本テレビ出身)

 柳沢幸雄北鎌倉学園・学園長は開成高校の元校長としても知られる。東京大学、ハーバード大学、開成高校で、それぞれ10年以上の教育歴を持つ。柳沢さんはまず孔子の論語を引きながら、人が「而立」(じりつ)するまでの教育経験は途中経過に過ぎないとしたうえで、大学の評価は就職という結果で評価され、高校を含む中等教育の評価は大学への合格実績で決まると語る。「入口主義」ともいえるこうした図式の中で、企業が大学名を評価基準として終身雇用の正社員を採用する限り、「大学生が勉強するインセンティブはない」と断ずる。米国の大学を例に挙げながら、「終身雇用」から「ジョブ型雇用」に転換することで、「学生の時間配分は劇的に変化するのではないか」と柳沢さんは語る。

 失われた30年の間に米国などではGAFAMが世界を大きく変えてきた。これからは「AIとともに生きる時代」である。日本を「太平の眠り」から覚ますには、まず大学の入試改革が必要だと主張する。そもそも学力試験は必要なのかとの問いかけに始まり、得意分野、好きな分野を極める教育の重要性を強調する。また大学教員の雇用形態も問題だと指摘する。米国では7年経過して教授になれない場合は、ポストを維持できなくなるという。「世代間の公平」、つまり教育・研究現場での世代交代を否応なく担保する仕組みとなっている。

 閉塞感を打破するため、柳沢さんは「現代の遣唐使」として毎年1000人の学部学生に奨学金を給付して、海外に送り出すべきだと提唱する。海外で学ぶことで、教育・研究の仕組みもやがて変わるというのがその狙いだ。「大学の空洞化が進むのでは」との質問には、「サケが産卵のために川に戻るように、必ず帰ってきますよ」と意に介さない。日本にはまだイノベーションのシーズが溢れている。「日本人の創意工夫で儲かる仕組みをつくろう」と会見を締めくくった。


ゲスト / Guest

  • 柳沢幸雄

    日本

    北鎌倉女子学園学園長/元開成中学校・高等学校校長

研究テーマ:大学どこへ

研究会回数:9

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