2023年11月17日 12:30 〜 13:40 10階ホール
日本赤十字社職員によるガザ報告会見

会見メモ

 日本赤十字社による医療支援事業でパレスチナ自治区のガザに派遣され活動していた川瀨佐知子看護師(大阪赤十字病院所属=写真1枚目右)が帰国し、会見に臨んだ。10月7日の武力衝突が起きたときの現地の様子、避難の経緯や現地スタッフの声を伝えた。

会見には、日本赤十字社本社事業局国際部次長の佐藤展章さん(写真1枚目左)も登壇し、国際赤十字による現地支援の状況を説明した。

 

川瀨さんは昨年からパレスチナ赤新月社アルクッズ病院で支援・指導に携わり、今年7月からは現地で活動していた。武力衝突を受け、ガザ南部のラファに退避。避難所で支援活動を続けていたが、安全が確保できなくなったことから11月5日に帰国した。

 

司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事・事務局長

 


会見リポート

ガザの現状「ミゼラブル」

石田 敦子 (毎日放送東京報道部部次長)

 ガザにあるアルクッズ病院で7月から日本赤十字社の医療支援事業で働いていた看護師の川瀨佐知子さんが、11月5日に帰国した。高い塀に囲まれたガザ独特の事情もあり、イスラエル軍の砲撃にさらされる現状を知る術は限定されている。それだけに川瀨さんが語る体験は生々しく、極めて悲劇的だ。

 川瀨さんがまず紹介したのは10月7日のイスラエル・ハマスの衝突以前のガザの様子だった。多くの人が行き交い、物も潤沢にあり、何より人々が明るく優しい。そんな光景を語る川瀨さんの声は弾んでいて、かえって今のガザがいかに非情な状況にあるのかを浮き彫りにする。逃げ場のない人たちのところへ砲撃が行なわれ、大勢の女性や子どもが亡くなり、救急車も攻撃を受ける。病院近くにも着弾し、救急外来で対応していた医師が運び込まれた患者を見たら自分の子どもたちで、一人はすでに亡くなっていたという。

 川瀨さんは、エジプトに退避する際に電話したアルクッズ病院の同僚の言葉を読み上げた。「自分たちがどんな悪いことをしたの? 命の重さはみんな同じはずなのに、この世界はフェアにはできていない。世界中が自分たちを攻撃している。自分たちに人権なんてない。私たちは本当にミゼラブル(惨めで不幸)だ」。それまで努めて冷静さを保っていた川瀨さんの感情が、この時決壊した。

 どう考えても異常で、あってはならないことが起こっている。川瀨さんの言葉から、それを何としてでも止めたいという強い思いが迫ってくる。会見に同席した佐藤展章さんは、国際赤十字の取り組みを通じて世論喚起と人道支援尊重機運の醸成を図りたいと話した。

 メディアは世論に訴える手段を持っており、我々にしかできないことがあるはずだ。人の命を救うことを諦めてはいけない。


ゲスト / Guest

  • 川瀨佐知子 / Sachiko KAWASE

    日本

    大阪赤十字病院看護部集中治療室看護係長

  • 佐藤展章 / Nobuaki SATOH

    日本

    日本赤十字社事業局国際部次長

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