2023年11月28日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「大学どこへ」(1) 大野英男・東北大学総長

会見メモ

少子化の影響により18歳人口の減少が続く。地方小規模校を中心に私立大学の定員割れも深刻化する。

生き残りをかけ模索する大学の現状と課題を考えるシリーズ「大学どこへ」の第1回として、東北大学総長の大野英男さんが登壇した。

東北大学は9月、大学の研究力を高めるために政府が創設した10兆円規模の大学ファンドの初の支援対象候補に選ばれた。

 

司会 倉澤治雄 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

変革の試金石 卓越大候補「東北大」のビジョン

松本 光樹 (毎日新聞社くらし科学環境部)

 日本の研究力の低下が叫ばれて久しい。現状の打開のため、政府は10兆円規模の大学ファンドから助成金を出す「国際卓越研究大学」制度を創設した。候補として初めて選ばれた東北大の大野英男総長は「変革をしないと日本の研究大学は存在感を失うばかりだ」と今後の世界と伍する研究大学実現に向けたビジョンを語った。

 東北大は「実学尊重」の理念のもと、アンテナや半導体レーザーなどの革新的な技術の礎が生みだしてきた。大野総長は、東日本大震災を契機として培った災害科学、次世代放射光施設「ナノテラス」などを通して、社会への貢献をさらに発展させる構想を説明。大学に技術や人材、資金の結節点としての役割を持たせてイノベーションの好循環を作るため、産学連携やスタートアップ支援の重要性を訴えた。「大学の守備範囲を広げようとしている。外部の人と一緒に大学のあり方を考えるのは非常に重要だ」と語り、学外者も含めた新たな合議体の設置の必要性についても肯定的な見解を語った。

 また、日本の研究力低下については、研究時間が少ないことを挙げる。大学ファンドからの助成金で、研究者の増員、研究を補助する人材の雇用など環境作りを進め、「現状は(勤務時間の)3割が研究。これを当面5割にすることを目指す」とした。同時に准教授や助教なども独自の研究をできるような体制作りを進め、基盤的な研究力の向上に務めるとした。

 東北大は、卓越大候補として論文数や事業規模を25年後に大幅に増やすなどの目標を掲げる。大野総長は「高い目標なのは間違いない。しかし、世界のトップ群に入らない目標では意味がない。いかに実現するか考えたい」と話す。日本の「研究大学」の新たなスタートは成功するのか。試金石となる東北大の取り組みに注目が集まっている。


ゲスト / Guest

  • 大野英男 / OHNO Hideo

    日本 / Japan

    東北大学総長 / President, Tohoku University

研究テーマ:大学どこへ

研究会回数:1

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