会見リポート
2023年11月22日
14:00 〜 15:00
10階ホール
「変動相場制50年~円の攻防」榊原英資・元財務官、インド経済研究所理事長
会見メモ
為替レートが1ドル=360円の固定相場制から変動相場制に移行してから今年で50年がたった。
「ミスター円」として知られる元財務官でインド経済研究所理事長の榊原英資さんが登壇。「変動相場制50年~円の攻防」と題し、この50年の円相場の変遷を振り返った。
司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBS)
会見リポート
「強い円は日本の国益」
平田 弓月 (共同通信社経済部次長)
かつて大蔵官僚として為替介入を指揮し「ミスター円」の異名を取った榊原英資氏が、変動相場制移行から50年の節目に日本経済の歩みと重ね合わせ、為替相場の現状認識を交えて語った。一時急速な円安が進んだドル円相場の先行きには円高予想を示した上で「円高の方が日本にはプラスという状況に変わってきた。強い円は日本の国益」と強調した。
1973年にドルの切り下げにより固定相場制が崩壊し、変動相場制が始まった意義について、輸出中心から海外進出の加速へ「日本企業のグローバル化に非常にプラスになった」と解説。以後、円高傾向に転換し、市場介入を含めた時々の為替政策など曲折を経て現在に至る推移を説明した。最近では昨年10月に約32年ぶりの円安水準となる1㌦=151円94銭を付け、今年秋も151円台を記録したが、円安相場は「底を打ったと思う」と言う。
時代とともに為替のインパクトは大きく変わったと力説する。「輸出を促進するから円安がいいんだというところから、グローバリゼーションに対応して日本企業が海外に積極的に出た結果として円高の方がプラスになった」と話した。
最近の円安は日本売りによるものではなく、緩和を続けた日本と引き締め局面だった米国の金融政策の差が原因と分析。今後は米経済が弱含む一方、日本経済は力強さが期待できることを円高見通しの根拠に挙げ「来年の夏から年末にかけて恐らく1㌦=130円ぐらい、場合によると130円を切る」と予測した。
円高デフレ再燃の懸念には「デフレの時代はもはや終わった。2、3%の物価上昇が日常的になり緩やかなインフレというか経済成長の時代に入った」との見方を示した。
「為替介入が好きな方だった」と自身の舞台裏も披露。ミスター円が円高を歓迎する姿からは日本の将来に対する明るい展望が感じ取れた。
ゲスト / Guest
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榊原英資 / Eisuke SAKAKIBARA
元財務官、インド経済研究所理事長 / Former Vice-Minister of Finance for International Affairs, President of the Institute for Indian Economics Studies
研究テーマ:変動相場制50年~円の攻防