2023年08月29日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「関東大震災100年」(9) 目黒公郎・東京大学教授、同大学院情報学環総合防災情報研究センター長

会見メモ

シリーズ最終回のゲストとして、都市震災軽減工学、国際防災戦略が専門の目黒公郎・東京大学教授が登壇。関東大震災の歴史的な意味や教訓、首都直下地震や巨大災害対策の課題などについて話した。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

 

プロフィール


会見リポート

巨大災害対策 優先順位決め総力戦を

原田 健男 (山陽放送出身)

 バブル崩壊後、失われた30年が続いているといわれる日本。東京大学総合防災情報研究センター長の目黒公郎教授は、こうした状況下、首都直下地震や南海トラフ地震が起きれば、国難的災害となるという。特に道路・トンネル・下水道・港湾等、社会インフラ施設は年々老朽化する中で修理新設が追いついておらず、これらの復旧に莫大な費用がかかり、国力が弱まると指摘する。

 その例として1755年に起きたリスボン大地震をあげた。津波による死者1万人を含む約9万人がなくなり、市街地は火災旋風等により5日間燃え続けたという。被害額は当時の国のGDPの153%にも及び、大航海時代の雄で当時海外植民地を拡大していたポルトガルは、国力が弱まっていった。

 日本でも、江戸時代末期相次いだ大災害が徳川幕府の力を弱めたと考えられるという。1853年から1862年までの10年間、ペリーの浦賀への来航や日米和親条約・修好通商条約の締結があったが、この間南海トラフ地震、首都直下地震、10万人死亡の東京湾直撃大型台風、コレラ江戸大流行、23万人死亡の麻疹(はしか)の大流行が起きている。

 実は100年前の関東大震災も日本の針路を大きく変えた可能性がある。震災の前にはスペイン風邪で39万人が死亡、震災後は首都圏の復旧や復興のため人々は強いリーダーシップを求めた。そして世界大恐慌の余波で昭和恐慌が起こり、軍部によるクーデター未遂や日中戦争拡大を経て太平洋戦争に突き進んでいった。

 では我々はどう準備すればいいのか。目黒教授は、「総力戦」では行政や企業は限られた資金をどう使うのか事前に優先順序を決め、発災後の人とモノの応援体制を準備しておくことが重要という。また個人では平時から生活の質を高めておくことが、巨大災害が来ても道を誤らないための対処法でもあるという。心に留めておきたいものだ。 


ゲスト / Guest

  • 目黒公郎 / Kimiro MEGURO

    東京大学教授、同大学院情報学環総合防災情報研究センター長

研究テーマ:関東大震災100年

研究会回数:9

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