2023年09月22日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「石油危機50年」小山堅・日本エネルギー経済研究所専務理事、保坂修司・日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長

会見メモ

1973年10月の第4次中東戦争を機に起きた第1次石油危機(オイルショック)から50年を迎える。

中東地域からの原油に依存してきた日本は、これを機に輸入先の分散化を図ってきたものの、その後逆戻りし、現在、原油輸入量の9割以上を中東に依存している。

日本エネルギー経済研究所専務理事で首席研究員の小山堅さん(写真左から1枚目)、同理事で中東研究センター長の保坂修司さんが登壇。保坂さんは中東地域と日本の関係から、小山さんはエネルギー危機の過去・現在・未来という点から、第1次石油危機の歴史的な意味と教訓、エネルギー確保をめぐる日本の今日的な課題について語った。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

過度の依存 避ける方策を

西尾 邦明 (朝日新聞社論説委員)

 世界的なエネルギー危機と物価高――。1973年のオイルショックとロシアのウクライナ侵攻後の世界は、どこか重なる部分がある。50年前の危機に、学ぶべきことは何か。共同会見で中東地域を専門とする保坂氏と、エネルギー安全保障に精通する小山氏がその教訓を語った。

 戦後の日本に高度経済成長をもたらしたのは中東のイランやクウェート、サウジアラビアなどから輸入する安価な原油だった。その8割以上を中東に依存していたが、当時の日本には「湾岸の専門家がほとんどいなかった。政府はもちろん研究者も正確な分析や情報収集ができていなかった」と保坂氏は振り返る。

 脱炭素の流れにある今も、中東の石油やガスは重要だ。再エネや水素、アンモニアでも中東は優位で、保坂氏は「日本のプレゼンスの維持が必要」と強調。中国やインドの台頭で経済的存在感が低下する中、日本の強みのアニメやゲーム、宇宙、ロボットの分野の活用や、政府要人同士の個人的なネットワークを築くことが欠かせないという。

 小山氏は「エネルギーのような戦略物資を特定の供給源に過度に依存することが、いかに潜在的なリスクになるのかの教訓を我々がどう学ぶかだ」と指摘。石油危機を経てエネルギー安全保障政策の本格展開が始まり、IEA(国際エネルギー機関)設立など消費国連携の立て直しがあったことを紹介した。

 足元ではもともとの脱炭素の動きに、ウクライナ危機による国際エネルギー市場の不安定化が加わり、小山氏は「市場に委ねていても解決はできない。政府が全面に出て対応しなければならない」とする。米中対立など経済安全保障の問題も重なり、政府の重要度は増している。

 この秋には次期エネルギー基本計画の策定の議論も始まる。地政学上のリスクやエネルギー安全保障は欠くことのできない視点といえる。


ゲスト / Guest

  • 小山堅

    日本エネルギー経済研究所専務理事

  • 保坂修司

    日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長

研究テーマ:石油危機50年

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