2023年05月15日 10:30 〜 11:30 10階ホール
アンドレアス・シュライヒャーOECD教育・スキル局長兼事務総長教育政策特別顧問 会見

会見メモ

経済協力開発機構(OECD)は、3月に「教育はテクノロジーとの競争に負けるのか?AIの読解力・数的思考力の進歩(仮訳)」と題した報告書を公表した。

G7教育大臣会合出席のため来日していたアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長兼事務総長教育政策特別顧問が登壇。同報告書を中心に、AIの読解力・数的思考力の評価、AIが仕事に与える影響や、AIとともに働く未来に向けて必要となる教育について話した。

 

司会 平井文夫 日本記者クラブ企画委員(フジテレビ)

通訳 池田薫 サイマル・インターナショナル


会見リポート

AIは教師の大きな力に

服部 真 (読売新聞東京本社編集局教育部)

 人工知能(AI)が進歩する中で教育をどう組み直すかというのが会見のテーマ。OECDはAIの能力について独自に研究し、2026年には読解力も含めて人間を追い越すという報告をこのほどまとめた。

 2000年に国際学習到達度調査(PISA)を始めた際、当時の知識習得型の学習は科学技術によって早晩不要になるとの予測が前提にあった。実際、ネットで検索すればほしい知識はすぐに手に入るようになった。そして今やチャットGPTなどの生成AIが登場し、人間の質問に人間のように答えてくれる。

 「読解力」「数的思考力」という人間の最も重要な2つの認知能力をAIが身につけたら人間は何をするのか。シュライヒャー氏は「電卓があっても数の概念理解は必要」などとした上で、「想像力を働かせ、AIも含め様々な力を総動員して解決する力が求められる」と説明した。

 だが、デジタル時代に生まれた日本の若者ですら、こうした力を十分に身につけていないという。「未来ではなく過去に目を向けた教育が行われている。このままだと子どもたちは、一流の人間ではなく二流のロボットにしかなれない」と警告する。

 「AIは魔法の力ではなく、人間が考え実践するプロセスを加速し、増幅してくれるだけだ」。大切なのは人間を代替するのではなく補完する使い方をすることなのだ。

 「個別最適な学びのため子どもたちの状態を分析する際、AIは教師の大きな力になる」と期待する一方、子どもたちが受け身になる危険性も指摘した。

 頻繁に来日して学校を視察し、日本の教育事情に通じている。質問が教師の働き方に及ぶと、日本の教師は諸外国に比べて授業の負担が少ないことを指摘。そのおかげで子どもたちと様々な関わり方ができるといつもは評価しているが、今回は多忙の原因であることを認め、AI時代に対応するため早急な解決を訴えた。


ゲスト / Guest

  • アンドレアス・シュライヒャー / Andreas Schleicher

    OECD教育・スキル局長兼事務総長教育政策特別顧問 / Director for Education and Skills, and Special Advisor on Education Policy to the Secretary-General at the Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD)

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