2023年05月25日 13:00 〜 14:30 9階会見場
「多様性社会への課題」(4)海外の性的指向・性自認の差別禁止法制 内藤忍・労働政策研究・研修機構副主任研究員

会見メモ

海外では性的少数者の権利はどのような制度でどのように保障されているのか、内藤忍(ないとう・しの)労働政策研究・研修機構研究員が英国の事例を中心に説明した。

日本の現行制度では、差別やハラスメントそのものを禁じていないため救済のうえで問題点があることを指摘したうえで、海外に比べ20年は遅れている、とした。

 

司会 早川由紀美 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

目指すべきは差別禁止法制

天野 由輝子 (日本経済新聞社ダイバーシティエディター)

 LGBTなど性的少数者らへの理解増進法案が注目を集めている。5月中旬のG7広島サミット開催を意識し、自民、公明の両党は法案を急ぎ衆院に提出した。「差別は許されない」との文言などに自民保守派が抵抗したため、「不当な差別はあってはならない」と修正を加えた法案だ。

 労働政策研究・研修機構副主任研究員の内藤忍さんの解説を聞くと、日本が周回遅れであることを改めて痛感する。EU加盟国は性的指向を理由とした差別を禁ずる法か法規定を整備している。英国には障害や人種などと並び、性的指向が理由の差別も許さない包括的な2010年平等法がある。差別禁止の手前の理解増進もすんなりいかない日本は「あまりにかけ離れた」状況であるという。

 女性は同じ性的指向の男性よりも職場でいじめを受けやすい、というデータもひもといた。トランスジェンダーの権利を保障すると、トランスジェンダーではない「シス女性」の安全を脅かすと懸念する人がいる。だが、「これまでトランスジェンダーもシス女性も性暴力の被害者となってきた。そもそもの問題は性暴力をなくせない社会と施策だ」と内藤さんは説明する。

 国際労働機関(ILO)の「仕事の世界における暴力とハラスメント」に関する条約はジェンダーを理由とした暴力やハラスメントも禁止する。日本政府は採択を支持しており、今後国内法化を目指す必要がある。内藤さんは「本来目指すべきなのは性的少数者だけではなく、あらゆる人の人権を保障する差別禁止法制だ」とも話す。これはさまざまな人に恩恵がある議論のはずだ。

 メディアに対しては「目先の法案だけではなく、本来どのような立法をすべきか忘れずに報道してほしい」と要望した。先行する海外の差別禁止法制を日本への示唆として頭に入れておく必要がある。


ゲスト / Guest

  • 内藤忍 / NAITO Shino

    日本 / Japan

    独立行政法人 労働政策研究・研修機構副主任研究員 / Vice Senior Researcher, Japan Institute for Labour Policy and Training (JILPT)

研究テーマ:多様性社会への課題

研究会回数:4

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