会見リポート
2023年05月11日
14:00 〜 15:30
9階会見場
「いま、なぜグローバルサウスが重要か」 ジャーナリスト 脇祐三さん
会見メモ
ロシアのウクライナ侵攻を受けて結束を強めた西側諸国=Global Westとロシア・中国という構造において、対ロシア制裁に加わらず中国との対立も避ける国々=Global Southと呼んでいる、と解説。グローバルサウス諸国の行動の背景を踏まえ、今後の国際情勢を展望した。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
会見リポート
「利害次第で誰とでも」が本質
五十嵐 朋子 (毎日新聞社外信部)
ロシアによるウクライナ侵攻以降、「グローバルサウス」という呼称が頻繁に使われるようになった。しかしグローバルサウスとは何なのか、理解があいまいだという人も多いかもしれない。報道の立場から長年国際情勢を見てきた脇祐三さんが、その歴史と今を明快に解き明かした。
もともとは冷戦時代に世界の経済格差を表す言葉として、世界の北に多い先進国を「グローバルノース」、南に多い途上国を「グローバルサウス」と呼んだことが始まり。当時は「東西」の政治・軍事的対立軸とは別の軸としての「南北」という意味もあった。冷戦終結後に気候変動問題でふたたび注目された。
最近頻繁に使われるのは、日本や豪州も含む広い意味での西側諸国「グローバルウエスト」への対語としての「グローバルサウス」だ。西側と中露の対立が深まる中、そのどちらにもくみしない立場を取る国々で、インドを筆頭にASEAN、トルコ、中東も含むという。
メディアでは、グローバルサウスを「中立的な立場を取る」と表現しがちだ。しかし、「利害次第で誰とでも連携する」と言った方が本質を表せるという。例えばインドは日米豪とともに「クアッド」のメンバーだが上海協力機構にも参加している。
米国を中心とした世界秩序は変化しつつある。米国は、グローバルサウスから見ると既得権益を守りたいだけのように見え、両者はうまくいかない。グローバルサウスのねらいは「パラダイムシフトの後のステージで、自分たちの成長に見合った発言力を持つこと」だと脇さんは指摘する。
経済力を増すグローバルサウスの存在は無視できないが、「こういった変化に日本は鈍感だ」と脇さん。「グローバルウエストの論理だけで進むと、日本の外交はアジアの中で浮いてしまう」と警鐘を鳴らした。
ゲスト / Guest
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脇祐三 / WAKI Yuzo
研究テーマ:いま、なぜグローバルサウスが重要か