2023年05月15日 14:00 〜 15:00 10階ホール
旧優生保護法国賠訴訟 会見

会見メモ

旧優生保護法の下、障害などを理由に不妊手術を強いられた被害者による国家賠償請求訴訟を巡っては、昨年2月に大阪地裁が逆転勝訴判決を出して以降、高裁、地裁で相次ぎ7件の被害者勝訴判決がでているが、国は控訴・上告している。

6月1日に仙台高裁で判決が出るのを前に、原告の一人で優生保護法被害全国原告団共同代表の飯塚淳子さん(仮名)、同全国弁護団共同代表の新里宏二さん、同大分弁護団団長の徳田靖之さん、「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」共同代表の藤井克徳さんが登壇。飯塚さんは自身が受けた被害の実態を語り「被害者は皆高齢化し、亡くなる人もでている。国は早く責任をとり謝罪と補償をしてほしい」と訴えた。新里さんは「戦後最大の違憲な法律による人権侵害。放置された被害をいま救済し、全面解決すべき」とし、政治解決に動くよう求めた。

会見には飯塚さんとともに全国原告団で共同代表を務める北三郎さん(仮名)も参加した。

 

司会 保高睦美 日本記者クラブ企画委員

 

※写真は左から順に飯塚淳子さん、新里宏二さん、徳田靖之さん、藤井克徳さん。6枚目が北三郎さん。

※YouTubeでは飯塚さんの顔は映さず、声も変えています。


会見リポート

問われるメディアの熱量

塩田 彩 (毎日教育総合研究所編集部)

 「被害者の命あるうちの全面解決を」――。旧優生保護法下で不妊手術を強いられた被害者と弁護団らは記者会見で、国に対して、国の責任を認めた司法判断を受け入れて訴訟を終結させ、具体的な解決の道筋をつけるよう強く迫った。

 同法を巡る国家賠償請求訴訟は、2018年の仙台地裁を皮切りに全国で提起された。22年2月以降、各地の1審、2審で法律の違憲性と国の責任を認める原告勝訴判決が相次いでいる。しかし国側はいずれも控訴、上告し、判決確定には至っていない。原告の一人、飯塚淳子さん(仮名)は「幸せな結婚や子どもというささやかな夢をすべて奪われた。裁判所は私たちの声を受け止めて公正な判断をしてほしい」と訴えた。(※飯塚さんらの訴訟は6月1日、仙台高裁で上告棄却)

 一連の訴訟の最大の争点は、手術から20年が経過したことによる除斥期間の適用だ。これまでの原告勝訴判決はいずれも、「著しく正義・公平の理念に反する」として適用を制限した。全国弁護団共同代表の新里宏二弁護士は「(勝訴判決は)適用の例外基準を示した過去の最高裁判決に基づいている」と指摘。旧優生保護法の非人道性や明白な違憲性から「きわめて特殊な事案であり、原告勝訴判決が確定しても、他の訴訟には影響しない」と強調した。

 原告35人のうち5人はすでに死去している。高齢の被害者に残された時間は少ない。かつて小泉純一郎首相と安倍晋三首相の政治判断で国が控訴を断念したハンセン病問題の国賠訴訟に携わってきた徳田靖之弁護士は「(旧優生保護法訴訟で)国側の抵抗を許しているのは、国民の関心の低さとメディアの熱量の低下だ」と指摘した。岸田文雄首相の政治決断を後押しし、一刻も早い人権救済の道を開けるか。世論もまた問われている。


ゲスト / Guest

  • 新里宏二 / Koji NIISATO

    弁護士、優生保護法被害全国弁護団共同代表

  • 徳田靖之 / Yasuyuki TOKUDA

    弁護士、優生保護法被害大分弁護団団長

  • 飯塚淳子(仮名) / Junko IIZUKA

    優生保護法被害全国原告団共同代表、 仙台訴訟原告

  • 藤井克徳 / Katsunori FUJII

    「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」(優生連)共同代表

ページのTOPへ