2023年07月10日 17:00 〜 18:00 10階ホール
2023年度日本記者クラブ賞 受賞記念講演会 西野智彦・TBSテレビ常勤監査役

会見メモ

2023年度の日本記者クラブ賞を受賞した西野智彦・TBSテレビ常勤監査役による受賞記念講演会を開催。西野さんは、事実を示すという一貫した姿勢と徹底した情報収集により、日本の財政・金融政策の決定過程の解明に挑み続けている。22年12月刊行の『ドキュメント 通貨失政』(岩波書店)では、オシント(OSINT = Open Source Intelligence)の手法を中心に、50年前のニクソン・ショック時の意思決定過程を克明に突き詰めた。

 

司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事・事務局長


会見リポート

事実の発掘と検証 不可欠

八牧 浩行 (時事通信出身)

 1989年から、時事通信・日銀クラブで一緒に激動ニュースを追った。西野記者は多角的な情報収集で特ダネを連発。「ファクトの発掘」はこの時代に培われたであろう。

 TBSに移ってからも、財政金融政策の決定過程に挑み、多くの著作を出した。最新作では50年前のニクソンショック時を解明。社会に警鐘を鳴らすジャーナリズムの本来の姿と言える。チャットGPTなど生成AIが及ばない世界で、いつの時代も記者によるファクトの発掘と検証は不可欠だろう。

 歴史の教訓として、記念講演で指摘したのは我が国の金融通貨政策の〝悪弊〟2例である。

 (1)強い政治リーダーが掲げる目標に金融政策が追随しがちな点。佐藤・田中内閣時の「円切り上げ阻止」、中曽根内閣時の「国際協調路線」、安倍内閣時の「デフレからの脱却」を列挙、「前2回は狂乱物価とバブルを招いた」と批判した。

 (2)調査部門が企画部門に従属しがちな点。70年代には「金融緩和しても物価は上がらない」との政治家の主張に対抗できなかった。「黒田異次元緩和」時には「2年で2%の物価安定目標を達成できる」と宣言したが達成できず、6回も先送り。「金融政策の独立」は形骸化した。

 植田体制で「異次元緩和」の正常化が可能かとの問いに、「極めて細いパスだが絶望はしていない」と展望した。


ゲスト / Guest

  • 西野智彦

    TBSテレビ常勤監査役

ページのTOPへ