2023年06月30日 17:00 〜 19:00 10階ホール
2023年度日本記者クラブ賞特別賞 受賞記念講演会 山下晴海・RSK山陽放送報道制作局長/免田事件資料保存委員会 高峰武さん、甲斐壮一さん、牧口敏孝さん

会見メモ

2023年度日本記者クラブ賞特別賞受賞者による受賞記念講演会を開催。RSK山陽放送「RSK地域スペシャル・メッセージ」取材班から、山下晴海・RSK山陽放送報道制作局長(写真1枚目)が、免田事件資料保存委員会から、高峰武さん(写真2枚目)、甲斐壮一さん(写真3枚目)、牧口敏孝さん(写真4枚目)が登壇し、印象に残る取材や報道にかける思いなどを語った。

 

司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事・事務局長


会見リポート

特別賞「RSK地域スペシャル・メッセージ」取材班

 (山下晴海 RSK山陽放送報道制作局長)

●地域と共に次のステージへ

  「メッセージ」は2012年4月に水曜のゴールデンタイムで放送を開始、これまでに250本以上のドキュメンタリーを発信し続けている。老老介護、地域医療、豪雨被害、ハンセン病など地域の今を切り取るテーマは、山下局長が「瀬戸内海の島は日本の縮図」と語る通り日本全体が抱える課題を映し出したと言える。

 視聴率重視で深夜に追いやられがちなドキュメンタリーをあえてメインストリートで発信するのはなぜか。開始当時、原憲一社長はドキュメンタリーこそ視聴者に見てもらえる時間に放送するべきだと常々口にしていたという。「視聴率に右往左往するな」と番組を支えたスポンサーの存在も大きかったそうだ。いまだどの局もなしえない編成を10年以上続ける志の高さに背筋が伸びる思いだ。

 さらにRSKは、取材を重ねた県内3カ所のハンセン病療養所を人権学習の場として世界遺産に登録する活動を広げている。「番組で地域の課題を掘り下げるだけではだめだ」と山下局長は次のステージを見据える。その言葉は、メディアの変革のもとローカル局が地域と共に生き続けるためのまさにメッセージに聞こえた。

鈴木 宏典(静岡放送東京支社次長兼報道編成部長兼ビジネスセンター業務担当)

 

 

特別賞 免田事件資料保存委員会

 (写真左から高峰武さん、甲斐壮一さん、牧口敏孝さん)

●「資料は誰のものなのか」

  日本で初めて死刑囚が再審無罪になった免田事件を40年余、取材してきた先輩たちである。罪を着せられた故免田栄さん、妻玉枝さんから5年前、膨大な資料を託されたのが委員会活動のきっかけだ。改めて実相に触れた3人は「驚きの連続だった」。整理・保存の成果は、粘り強い検証と記録の大切さを教えてくれる。

 「冤罪の防止に役立て、若い人に伝えてほしい」というのが免田さんらの願いであった。原資料の確認にもこだわったという。最初の再審請求書を目にしたエピソードが印象的だ。閲覧は申請から1年もかかり、熊本地検の狭い部屋で、職員の立ち会いで書き写さなければならなかった。「資料は誰のものなのか」と訴える高峰氏の言葉は、多くの冤罪事件で再審をかたくなに拒み続ける検察の姿勢を問い質すものだろう。

 「権力と一人で戦った免田さんの希有な生き方には、もっと学ぶことがある」。そして、地方の報道機関でも「普遍という岩盤に到達する道は必ずある」と語ってくれた。地方紙に身を置く後輩の端くれとして背中を押されているようだった。

小多 崇(熊本日日新聞社東京支社編集部長)


ゲスト / Guest

  • 山下晴海

    RSK山陽放送報道制作局長

  • 高峰武

    免田事件資料保存委員会

  • 甲斐壮一

    免田事件資料保存委員会

  • 牧口敏孝

    免田事件資料保存委員会

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