会見リポート
2023年04月21日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「植田日銀の課題」(2) 河野龍太郎 BNPパリバ証券チーフエコノミスト
会見メモ
BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎さんが登壇し、日本の長期的な課題と植田日銀の課題について話した。
司会 小竹洋之 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
会見リポート
停滞脱出へ構造改革こそ
堀 義男 (時事通信出身)
10年間もの異次元緩和政策に厳しい評価を突き付けた。成果とされる400万人の雇用増加は「高齢者や女性の労働参加が主因。白川方明総裁の緩和政策でも達成された」と説明。円高是正も長期的に進んでいた「製造業の生産性上昇率の相対的な低さが主な理由」と切り捨てた。
返す刀で「期待インフレ率が0%台から1%台に切り上がったのはグローバルインフレの影響。異次元緩和の効果ではない」と両断した。
異次元緩和が目指した2%物価目標に関し「国によって経済構造に違いがあり、望ましいインフレ率も異なる可能性がある」と指摘。無理な目標を掲げ、日銀の大量国債購入を通じた財政規律弛緩や金融機関経営への悪影響、市場機能低下が懸念されたが、「比例原則」を無視して同政策が選択されたと振り返った。
河野氏は日本の長期停滞はデフレや金融緩和不足ではなく、「構造的なもの」とみる。にもかかわらず構造改革を先送りし、金融緩和と拡張的財政のマクロ安定政策に頼ったと政府・日銀に厳しい目を向けた。
植田和男総裁を待ち構えるのは、日銀が保有する大量の上場投資信託(ETF)のオフバランス化など異次元緩和の後始末だ。中でも、弊害が指摘される「イールドカーブ・コントロール(YCC)」政策の修正・撤廃を、世界的に長期金利が安定している間に行うべきだと強調した。
また、米国が「柔軟な平均インフレ目標」によって利上げが遅れたのを教訓にする必要を挙げた。急ピッチな利上げが銀行破綻の引き金になっただけに、「早めの対応が金融安定にもつながる」との解説も加えた。
ただ、本格的な出口戦略である短期金利をマイナスやゼロとする政策の見直しは、欧米利上げや銀行破綻などによる「国際経済の下押し圧力が落ち着いた後になる」と判断。「植田総裁もグラジュアリズム(漸進主義)を重んじる」とし、金融経済情勢を当面見極めるとの見方を示した。
ゲスト / Guest
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河野龍太郎 / KONO Ryutaro
BNPパリバ証券チーフエコノミスト / Chief Japan Economist, Head of Economic Research, BNP Paribas Securities
研究テーマ:植田日銀の課題
研究会回数:2