2023年03月10日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「日本の安全保障を問う」(8) 香田洋二・元海上自衛隊自衛艦隊司令官

会見メモ

今年1月に『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』を刊行した元海上自衛隊自衛艦隊司令官の香田洋二さんが登壇。ウクライナ戦争から見える現時点での教訓なども踏まえ、安全保障関連3文書を評価するとともに、今後の課題などについて話した。

 

司会 佐藤千矢子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞社)


会見リポート

3文書 「説明不足」深刻

滝野 隆浩 (毎日新聞社会部専門編集委員)

 冷戦期から「テロとの戦い」期をへて、現在の米中対立時代まで。香田さんの会見は、戦後の安全保障史の概観から始まった。そして焦眉のテーマ「ウクライナ戦争」「中国のロシア観」までが前段だった。

 「資料を最終的に事務局に送付したのは、けさ午前1時でした」。最新情報を入れるためだという。会見にかける熱意が伝わってくる。

 後段は、政府が昨年末に閣議決定し、「戦後安全保障政策の大転換」とされる「安全保障3文書」の評価について。今年1月、『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』(中公新書ラクレ)を出した香田さんは、新聞インタビューなどで再三、3文書を厳しく批判してきた。このため、この後段が本会見の聞きどころだった。

 3文書は「総論としては画期的なものであり高く評価したい」という。しかし、各論では①国民への深刻な説明不足②各施策の実現可能性に対する強い疑問③新開発装備の必要性、効率性、有効性の説明不足④日米共同維持上のリスクの軽視――を挙げて批判した。

 具体的には、たとえば政府が「400発」の導入を計画している米国製の巡航ミサイル「トマホーク」。香田さんは「米軍が持っている、発射に必要な機微な地図情報を入手できるのか。指揮管制システムは整っているのか。そのあたりの議論がまったく行われていない」と批判。また陸上型から変更された「イージス・システム搭載艦」についても、「今後の費用負担についてもまったく国民に知らされないまま計画が進んでいる」と指摘した。

 最後に質問に答える形でこう話した。「政府に、わが国の安全を守るために何をすべきかという覚悟と、国民の理解をきちんと得るという信念が欠落している」。会見前に書いた揮ごうは「民主主義 為国民」だった。


ゲスト / Guest

  • 香田洋二 / Yoji KODA

    元海上自衛隊自衛艦隊司令官 / Vice Admiral (Retired) , Japan Maritime Self-Defense Force(JMSDF)

研究テーマ:日本の安全保障を問う

研究会回数:8

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