2023年02月14日 16:00 〜 17:00 9階会見場
日本学術会議 歴代会長 会見

会見メモ

日本学術会議会長を務めた吉川弘之さん、黒川清さん、広渡清吾さん、大西隆さん、山極壽一さんが連名で「岸田首相に対して日本学術会議の独立性および自主性の尊重と擁護を求める声明」を発表、吉川さんを除く4人が会見に臨んだ。

 

司会 元村有希子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞社)

 

※写真左から黒川さん、広渡さん、大西さん

※山極さんはリモートで登壇


会見リポート

任命拒否の正当化懸念

矢野 雄介 (共同通信社科学部)

 日本学術会議の会員選考を巡り政府は、会員が新会員候補を決めて推薦する現行の仕組みを変える方針を示している。選考の際に会員が第三者でつくる「選考諮問委員会(仮称)」の意見を聞き、その意見を尊重するよう義務付ける内容で、今国会に関連法の改正案を提出する構えだ。そうした中、科学者の代表機関としての独立性を重視する立場から、危機感を強める黒川清、広渡清吾、大西隆、山極壽一の歴代会長4氏が会見し、反対声明を公表した。

 改正案は、菅義偉前首相による新会員候補6人の任命拒否を機に検討が進められた。政府は選考方法見直しの理由を「透明性を高めるため」とする一方で、任命拒否の理由を説明していない。山極氏は「問題は終わっていない。権力を持つ者が理由もなく権限を行使できるということが日本の政治でまかり通れば、いろいろなところに波及する」と述べ、政府は拒否の理由を明確にした上で改正案を考えるべきだと訴えた。広渡氏は「法改正の狙いは任命拒否の正当化だ」と指摘し、制度として法の中に組み込む狙いがあると喝破した。

 会員が新会員を推薦する「コ・オプテーション方式」は、世界の科学者代表機関でも一般的だ。優れた研究や業績のある人かどうか、同じ科学者に判断を委ねることが適切との考えからだが、新設される諮問委のメンバーは科学者とは限らない。4氏の訴えの背景には、政府案が通れば、一国の政府や首相の意に左右されず広く人類社会に対する責任を負うという、学術界の使命を果たせなくなるとの危機感がある。

 黒川氏は「(科学者組織は)政策についてコメントを出し、最終的に決めるのは政治。そのプロセスが大事だ」と強調。大西氏は「現代の文明が抱える問題に対し、総合的な知見を整理できるのは学術会議以外にない」とし、そうした発信ができなくなれば危うい社会になると訴えた。


ゲスト / Guest

  • 黒川清

    日本学術会議第19-20期会長

  • 広渡清吾

    日本学術会議第21期会長

  • 大西隆

    日本学術会議第22-23期会長

  • 山極壽一

    日本学術会議第24期会長

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