2022年12月02日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「雇用問題研究会」(4) プラットフォーム労働はこれからどうなるのか? 川上資人 弁護士・早稲田リーガルコモンズ法律事務所

会見メモ

ウーバーイーツの配達員が会社側と団体交渉をする権利を認めるよう求めている紛争で、東京都労働委員会は11月25日、ウーバーイーツの配達員が労働組合を作り、団体交渉を求める権利があるとし、ウーバーイーツの運営会社などに対して、配達員の労働組合と団体交渉に応じるよう命じた。

ユニオンの立ち上げ時から支援し、今回の紛争の組合側の代理人でもある早稲田リーガルコモンズ法律事務所弁護士の川上資人さんが、この間の経緯、今回の争点をあらためて説明するとともに、プラットフォーム労働の問題点や何が必要なのか、海外の例も含め話した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

当たり前なき日本の現状

板垣 哲也 (朝日新聞社論説委員)

 飲食デリバリー大手の「ウーバーイーツ」の運営会社に昨年11月、東京都労働委員会が、配達員らの労働組合との団体交渉に応じるよう命じた。

 ネット上のプラットフォームを介した働き手の保護は、今後、進むのか。ユニオンの法律顧問、川上資人弁護士の話が浮き彫りにしたのは、議論の入り口にすら立っていない日本の現状だ。

 そもそも労働組合法の趣旨は、交渉力に圧倒的な差がある働き手を保護することだ。報酬を一方的に変更され、アカウントを停止されてもあらがう術もない状況をみれば、配達員を労組法で保護すべき「労働者」と認めた判断はうなずける。

 だが、この決定を得るまでに2年余り。会社側はこの会見の後日、中央労働委員会に再審査を申し立てた。「ただ会社側と話し合いたいだけ」。その当たり前のことさえできないのが、今の日本の現状だ。

 こうした働き手の保護に向けた海外の動向も興味深かった。個人で仕事を請け負うフリーランスと雇われて働く人のどちらでもない「ワーカー」として保護する英国、雇用類似の働き手として労災保険の対象とし、保険料も労使で折半する韓国。EUでは、プラットフォーム事業者に透明性確保も促す方向という。

 日本でも労災の特別加入をギグワーカーに広げる見直しなどが進んだが、保険料はすべて個人負担だ。今の制度を前提にした手直しの限界、新たなアプローチの必要性を説く川上弁護士の話は説得力がある。

 もちろん、すべての働き手が雇用労働者と同等の保護を求めているわけではない。ウーバーの配達員の中でも、例えば最低賃金への考え方は様々という。それでも、仕事に伴うけがなどへの不安、一方的に報酬を引き下げられることなどへの不満は共通という。最低限、労災の補償、団体交渉などの権利を認めることは急務と言えるだろう。 


ゲスト / Guest

  • 川上資人 / Yoshihito KAWAKAMI

    弁護士・早稲田リーガルコモンズ法律事務所

研究テーマ:雇用問題研究会

研究会回数:4

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