2022年11月07日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「日本の安全保障を問う」(3) 島田和久・前防衛事務次官

会見メモ

今年7月まで防衛事務次官を務めた島田和久さんが登壇。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻からみえること、日本を取り巻く安全保障環境の変化、日本の防衛や防衛費の考え方などについて話した。

 

司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

防衛力 抜本的強化へ転換

川上 高志 (企画委員 同シリーズ担当 共同通信社特別編集委員)

 岸田文雄首相が年末に予定する外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」など3文書の改定に向けて、議論が本格化している。

 焦点は防衛費の大幅増額と敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有の是非になるが、既にそれを前提としたかのような防衛力強化の案が示されている。だが、本当に国を守る外交・安保政策とはどうあるべきなのか。「専守防衛」という戦後の安保政策の抜本的転換につながる可能性がある課題だけに、その根本を整理したいというのがシリーズ「日本の安全保障を問う」を始めた狙いだ。

 島田氏は第2次安倍政権で約6年半、首相秘書官を務めた後、今年7月まで防衛事務次官のポストにあった。まさに近年の防衛力増強を進めてきた中心人物だ。その論理立てを聞きたかった。

 会見では安保政策の目的として「戦争の惨禍を繰り返さない」という言葉から入った。そして憲法9条による戦争放棄で「日本が再び戦争を起こすことを防ぐ」という命題が、現在は「日本に対する他国の武力攻撃を防ぐ」という命題に変わり、そのために「憲法と専守防衛の基本方針の下で防衛力の抜本的強化が必要だ」と強調した。

 そこで問われるのは、専守防衛の下でどういう装備を持ち、それが抑止力として本当に機能するのかという点だろう。島田氏は「最悪の事態に主体的に備える」必要性を指摘。中国、北朝鮮、ロシアという三つの核保有国に囲まれた日本として、一定の反撃能力の保有や継戦能力の確保、軍民共用の開発研究など多くの課題を列挙した。

 防衛費抑制の機能を果たしてきた防衛計画大綱なども本質的に転換し、抜本的強化の実現を図るための文書とする考えも示した。示された論点は安保政策の「肝」ばかりだ。真剣に深掘りする議論の必要性を再確認する会見だった。


ゲスト / Guest

  • 島田和久 / Kazuhisa SHIMADA

    前防衛事務次官 / Former Administrative Vice-Minister of Defense

研究テーマ:日本の安全保障を問う

研究会回数:3

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