2022年10月07日 13:00 〜 14:30 10階ホール
国連「国内避難民の人権に関する特別報告者」セシリア・ヒメネス=ダマリーさん(UN expert Cecilia Jimenez-Damary)会見 

会見メモ

東京電力福島第一原発事故により避難を余儀なくされた避難民の調査のため来日している国連の国内避難民人権特別報告者のセシリア・ヒメネス=ダマリーさんが、調査終了報告書(初期考察)について会見した。

ヒメネスさんは、国連人権理事会に任命され、2016年から同報告者を務める。日本での調査は今回が初。

初期考察では「避難民は強制避難か自主避難かを問わず全員が国内避難民であり、他の日本国民と同等の権利権限を有する」と明記。「支援や援助を受ける上での区別は取り除くべきである」とした。

全体報告については、2023年6月の国連人権委員会で報告される予定。

 

■調査終了報告書最終版(The final versions of the End of Mission Statement)

日本語版(Japanese)

英語版(English)

 

司会 坪井ゆづる 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

通訳 西村好美 (サイマル・インターナショナル)

 


会見リポート

区別なく避難者支援継続を

田島 沙羅 (共同通信社原子力報道室)

 東京電力福島第1原発事故から11年半。避難指示が出された強制避難者と自主避難者の間で、賠償金や住宅支援などに隔たりがある中、国連人権理事会が任命した専門家による本格的な調査が初めて行われた。国連のセシリア・ヒメネス=ダマリー特別報告者(国内避難民の人権担当)は会見で、強制避難者と自主避難者の区別を「国際人権法に基づかない。全員が他の日本国民と同等の権利を有する」と指摘し、区別の撤廃と避難を続ける人たちへの支援継続を訴えた。

 ヒメネス=ダマリー氏は2016年に特別報告者に任命された。9月26日に来日し、避難者や国、自治体の担当者らと面会した。来年6月の人権理で調査の全体報告を行う。

 会見で発表された調査終了報告書は、「国レベルでの被災者の保護と支援に関しては一貫したアプローチは十分ではない」と批判。ヒメネス=ダマリー氏は、避難者の失業率が2割と国内全体よりも高いことや、事故当時子どもだった若者の放射線暴露による健康影響などに懸念を示した。その上で「さらに対応が行われるべき点」として、①安心・安全と住宅②家庭生活③暮らし④健康⑤教育⑥参加―の6つの権利を挙げた。

 さらに避難者らに関わる方針や計画を決める際に「自分たちの意見が反映される権利が堅持され、意思決定がどのような動機で進められるか意見を述べる権利が保障されなければいけない」と提言。「これからも国内避難民の権利に目を向けてほしい」と重ねて訴えた。

 質疑応答では、住宅補助を打ち切られた自主避難者への訴訟や、帰還意思の有無によって避難者として見なされなくなることに関する質問が相次いだ。ヒメネス=ダマリー氏は「避難指示の有無ではなく、実際の状況に照らして国内避難民を定義するべき。特に障がい者など、脆弱な立場にある人たちには社会福祉制度で責任ある対応をするべき」と強調した。


ゲスト / Guest

  • セシリア・ヒメネス=ダマリー / Cecilia JIMENEZ-DAMARY

    国連 / UN

    国内避難民の人権に関する特別報告者 / Special Rapporteur on the human rights of internally displaced persons

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