会見リポート
2022年08月08日
09:50 〜 10:20
10階ホール
アントニオ・グテーレス国連事務総長 会見
会見メモ
8月5日に来日したアントニオ・グテーレス(Antonio Guterres)事務総長が会見した。
司会 沢井俊光 日本記者クラブ副理事長(共同通信)
通訳 西村好美、渡辺奈緒子(サイマルインターナショナル)
★The video in the English version is here
会見リポート
核使用 「国連は対応できぬ」
鈴木 克彦 (時事通信社外信部)
唯一の戦争被爆国・日本でも、一般の日本人が核戦争勃発の危機に思いを巡らせる機会はそう多くはないだろう。それでも、ウクライナへ侵攻したロシアが核の威嚇を繰り返す中で、われわれも核の脅威認識を改めざるを得なくなった。「核戦争の危険性は高まっている。新たな核戦争が起きたら、地球は破滅する」。機能不全との批判も浴びる国連のトップとして、その口調には強い危機感が反映されていた。
来日したグテーレス事務総長は、被爆77年を迎えた広島市での平和記念式典に初めて出席し、あいさつで「深刻な核の脅威が世界各地で急速に広がっている」と指摘。核兵器を保有する米英仏中ロの五大国に対し核兵器の「先制不使用」の誓約を求めた。7年ぶりに国連本部で核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開かれているさなかに、「ヒロシマ」からのメッセージで、停滞する現状打破への期待を込めたことは想像に難くない。しかし、呼び掛けから2日後に行われた今回の記者会見で、「(五大国から)反応はなかった」と明かした。これまでの核軍縮・廃絶に向けた動きの鈍さを考慮すれば想定内と言えるが、表情には失望が色濃くにじんだ。
折しも、まるで来日に合わせたかのようにウクライナ南東部ザポロジエ(ザポリージャ)原発への砲撃が続発。ロシアとウクライナ双方が相手側による攻撃と非難合戦を続ける中、グテーレス氏は「原発への攻撃は自殺行為。すぐに止まることを望む」と呼びかけたが、実効性は見通せない。
「もしロシアが核兵器を使ったら?」。会見場からはこんな質問も出た。こうした問い掛けには、国内外の要人の多くは「仮定の話には答えられない」などと言葉を濁すのが常とう句だが、グテーレス氏は「国連には対応できない」と吐露した。核を振りかざす当事者らの耳に、国連や国際社会の悲痛の叫びは届くのだろうか。
ゲスト / Guest
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アントニオ・グテーレス / António Guterres
国連事務総長 / Secretary-General of the United Nations