2022年07月29日 10:00 〜 11:00 10階ホール
中満泉・国連事務次長(軍縮担当上級代表) 会見

会見メモ

核不拡散条約(NPT)の再検討会議が8月1日から米ニューヨークの国連本部で開かれるのを前に、国連の軍縮担当上級代表を務める中満泉さんがニューヨークからリモートで会見し、会議の焦点などについて語った。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

「対話と交渉で核リスク低減を」

倉澤 治雄 (日本テレビ出身)

 ロシアによるウクライナ侵攻から3日後の2月27日、プーチン大統領は核抑止部隊に「高度な警戒体制」に移行することを命じた。核兵器による現実のリスクが顕在化した瞬間である。

 「(ロシアによる)ウクライナ侵攻で世界は変わってしまいました」

 8月1日から国連本部で始まる核不拡散条約(NPT)再検討会議を前に、中満さんはこう切り出した。非核保有国を核で脅しながら通常兵器で侵略するという、「核抑止力の一番あってはならない形が眼前で繰り広げられた」ことに、中満さんは深い憂慮の念を表明した。

 ウクライナ侵攻以前から、安全保障環境の激変は始まっていた。とりわけ中距離核戦力(INF)全廃条約については、米国がロシアの条約違反を理由に離脱を表明、2019年8月2日に条約は失効した。米国とロシアによる核・ミサイルの高度化に加え、中国が急速に核軍拡を進めていることは、すでに周知の事実となっている。世界には依然、1万2000発を超える核弾頭が存在している。

 中満さんは「核兵器のリスクは冷戦の最盛期と同じくらいに高く、数の上ではともかく、質的にはすでに軍拡競争が始まっているのではないか」との認識に立っている。その上で「いま最も重要なのは核をめぐるリスクの低減であり、対話と交渉により信頼醸成を図っていく必要がある」と強調した。

 「軍縮の道に戻る会議」とするために、中満さんは5点を挙げた。「核兵器不使用原則の再確認」「透明性などリスク低減の具体的方策」「核なき世界への締約国のコミットメント」「IAEAを中心とする核不拡散レジームの強化」、それに「SDG'sの視点を投影した核の平和利用」である。

 再検討会議の開催は2015年以来、7年ぶりのことである。世界の分断が進む中、非難の応酬で終わるのか、あるいは「核軍縮・核不拡散」の道に戻ることができるのか、約4週間に及ぶ会議の行方は予断を許さない。

 


ゲスト / Guest

  • 中満泉 / Izumi NAKAMITSU

    国連事務次長(軍縮担当上級代表) / UN Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs

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