2022年07月27日 15:00 〜 16:00 10階ホール
村田慎二郎・国境なき医師団日本 事務局長 会見

会見メモ

ミャンマーのラカイン州から、大勢の少数派イスラム教徒ロヒンギャがバングラデシュなどに逃れてから、8月で5年になる。

6月25日から7月7日までバングラデシュを訪問し、100万人以上のロヒンギャが暮らす難民キャンプを視察してきた国境なき医師団日本の村田慎二郎事務局長が現地の状況を報告した。

 

【訂正】

プレゼンテーションのP17「人口の4割が何らかの精神疾患を抱える」は、正しくは「MSF病院のうちの一カ所の、メンタルヘルス診療科を受診する患者の4割が精神疾患を抱える」です。

 

司会 早川由紀美 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

 

 


会見リポート

ウクライナの影響、ロヒンギャ難民にも

小岩井 忠道 (共同通信出身)

 援助に頼る過密な生活環境、清潔な水の供給量不足、衛生状態の悪化、移動の制限。こうしたキャンプ生活によるストレスに加え、ミャンマーへの帰還が望み薄であることから子供たちの教育に対する不安を訴える人も増えている…。バングラデシュに住む約100万人のロヒンギャ難民の厳しい現状が詳しく報告された。

 「国境なき医師団」が支援活動を実施している病院の一つではメンタルヘルス診療科を受診する患者の4割が精神疾患を抱える、という現状に驚く。

 九つの病院すべてでみると、昨年1年間で2万1000人が入院、心のケアで個別の相談に応じた件数は3万3000件に上るという。

 心のケア以外の疾患に悩む難民の数も膨大だ。特に今年に入って増えているのが、ダニが原因の疥癬(かいせん)をはじめとする皮膚感染症。今年3~6月に9カ所の難民キャンプで3万8000人が治療を受けた。難民の3割が有症者という。

 C型肝炎、糖尿病を患う人も多い。こちらも有症率はそれぞれ2割、6~7割に上る。

 さらに村田氏が6月下旬から7月上旬にかけて現地を視察して確認した、ロヒンギャ難民に広がる強い不安がある。子どもの教育の機会が奪われていることだ。小学生相当に対する教育施設が圧倒的に足りず、中学生相当以上となると全くない。

 ロシアによるウクライナ侵攻の被害が、ロヒンギャ難民にも及んでいる現実も心配だ。今年上半期の保健分野の援助団体数は昨年上半期に比べ3分の2に減った。援助資金は必要額の25%以下しか集まっていない、という世界保健機関(WHO)の報告が紹介された。欧州の援助団体の関心が欧州に向かっているためだ。再びロヒンギャ問題を地域的、国際的な優先課題にすべきだ、とする村田氏の提言は、同じアジアの民として重く受け止めるべきだろう。


ゲスト / Guest

  • 村田慎二郎 / Sinjiro MURATA

    国境なき医師団日本 事務局長

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