2022年07月11日 15:45 〜 16:45 10階ホール
松井一實・広島市長、田上富久・長崎市長 会見

会見メモ

松井一實・広島市長(写真左)、田上富久・長崎市長は、6月21から23日にオーストリア・ウィーンで開催された核兵器禁止条約の初の締約国会議に、国際NGO・平和首長会議を代表して参加した。

両市長がリモートで会見し、会議の様子、同条約の意義、核廃絶に向けた思い、道筋などについて話した。

 

司会 佐藤千矢子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

核廃絶へ「橋渡し」の形は

下久保 聖司 (中国新聞東京支社編集部長)

 政権与党が大勝を飾った参院選の翌日。岸田文雄首相が耳を傾けるべき記者会見があった。オンラインで弁舌を振るったのは、被爆地広島、長崎の両市長。衆院広島1区選出で「核兵器のない世界」を掲げながら、歴代政権との違いが見えにくい岸田首相の姿に疑問を投げかけた。

 松井一實・広島市長(右)と田上富久・長崎市長は、核兵器禁止条約の第1回締約国会議(6月21~23日、オーストリア・ウィーン)に平和首長会議の代表として参加。討議の肝や会場の雰囲気を伝えるため会見に臨んだ。

 核廃絶に向けた宣言と行動計画を採択した締約国会議を「極めて意義があった」と松井市長は振り返る。田上市長も「大事な一歩を踏み出せた安堵感」と表現した。核なき世界を願いながら、老いを深める被爆者たちの心境を率直に代弁した形だ。

 その歴史的な会議に日本政府関係者の姿はなかった。核兵器禁止条約に背を向け、今回はオブザーバー参加も辞退。被爆者の憤りや失望を知る両市長だが、会見では声高になじらず、国際社会のうねりを伝えることで首相をたしなめる形を取った。

 日本と同じく「核の傘」の下にあるドイツやオーストラリア、ノルウェーなどがオブザーバー参加したことを紹介。それらの国々の狙いは、情報収集や対話だったという。そのスタンスこそまさに、かねて日本政府が自称する核保有国と非保有国の「橋渡し役」の形ではないか。

 「核保有国との調整を優先させる手順にこだわらなくても、核なき世界を目指せる」と手応えを口にした松井市長。来年の第2回締約国会議へのオブザーバー参加を日本政府に働き掛けていく考えも示した。

 被爆77年の「8・6」広島、「8・9」長崎の日が近づく。松井、田上両市長は式典あいさつで今回と同じ話をするだろう。岸田首相にはモットーの「聞く力」を実行・実現につなげてもらいたい。 


ゲスト / Guest

  • 松井一實 / Kazumi MATSUI

    広島市長 / Mayor of Hiroshima city

  • 田上富久 / Tomihisa TAUE

    長崎市長 / Mayor of Nagasaki city

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