2022年09月07日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「科学技術立国」(6) 島田眞路・山梨大学学長

会見メモ

島田眞路・山梨大学学長が登壇。「『科学技術立国』の再興に向けて」と題し、日本の研究力低下の現状と背景、真に必要な施策のあり方などについて語った。

島田学長は、山梨医科大学(現山梨大学医学部)皮膚科学教室教授、山梨大学医学部附属病院長を経て、2015年から現職。日本の研究力向上には、地方大学などのすそ野から活性化することが必要との認識を示してきた。

 

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

科学技術再興の鍵は地方大学に

小出 重幸 (読売新聞出身)

 旧帝国大学など名門大学に対し、研究予算環境に恵まれない地方大学。その学長として、独自の視座と創造性を武器に努力を重ねてきた8年間を総括しながら、日本の科学研究、医学研究衰退の根底を、厳しく指摘した。

 科学研究活動が著しく低下したのは、2000年代中ごろから。論文数、国際的な論文評価指標など、次々と先進諸国に追い抜かれ、成長著しい中国や、米国には大きな差をつけられた。

 背景には、日本のGDPの低迷という事情があるが、漫然と研究費を切り下げてきた文科省、それを査定するだけで、国家全体の成長戦略を描かない財務省に、責任があると指弾する。

 特に、国立大学改革と称して科学行政が進めてきた、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)、指定国立大学規制緩和指定、国際卓越研究大学10兆円ファンド創設――などの“選択と集中”政策は10数年間、タイトルが変わるだけで、「いずれも明確な成果が示せず、明らかな失政。国全体の危機感がなさすぎるのではないか。財務省を含め、根本から科学行政のフレームを変えなければならない。メディアもこうしたメッセージを広く社会に届けてほしい」と訴えた。

 会見では、新型コロナ(COVID-19)対策の混乱など、多領域の「現代日本の問題点」に触れ、一方では、地方大学として大学間の形態を超えた連携を進める「大学アライアンスやまなし」、新型コロナ対策として、患者情報を一元化して地域医療に貢献するシステム「SHINGEN」など、地道なプロジェクトも紹介した。

 「質の良い研究には、資金がいる。しかし日本では政府負担の研究費が、主要国の中では最低レベルで、改善されない。これは若手研究者の意欲を削ぎ、最終的に国力全体の低下という結果を招くので、日本の各階層の人たちに真剣に考えてもらいたい」

 この熱いメッセージを、より多くの人に伝えるにはどうしたら良いか、報道側にも宿題を手渡した。


ゲスト / Guest

  • 島田眞路 / Shinji SHIMADA

    山梨大学学長 / President, University of Yamanashi

研究テーマ:科学技術立国

研究会回数:6

ページのTOPへ