2022年06月27日 15:00 〜 16:00 10階ホール
レジス・サビオ赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表 会見

会見メモ

 3年間の任期を終え、7月に離日するレジス・サビオ・赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表が、紛争の現場で直面する課題や、中立な組織としての紛争当事者との向き合い方などについて話した。

赤十字国際委員会(ICRC)はウクライナ危機の最前線で人道支援を行っているほか、6月21日から23日にウィーンで開催された核兵器禁止条約の第一回締約国会議に、日本の大学生2人をICRCユース代表として派遣した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 西村好美 サイマル・インターナショナル


会見リポート

「日本も核兵器禁止条約に加盟を」

竹内 幸史 (朝日新聞出身)

 良い意味で、予想外の記者会見だった。赤十字国際委員会(ICRC)の人々にはアフガニスタンなど紛争地でお世話になることが多く、今回もウクライナの緊急医療支援が主題かと思っていた。ところが実際は、3年にわたる駐日代表の仕事を終えて離任する直前だけに、地球規模の課題と岸田政権の“宿題”となる明確なメッセージを発信した。

 サビオ氏によると、世界では現在、気候変動やコロナ禍に加え、100以上の地域で紛争が起きており、3億人近くが人道支援を求め、8億人余りが飢えに苦しんでいる。その規模は、数年前より倍増の勢いだ。それでもICRCは約4,000万人の膨大なボランティア網を駆使して“ラスト・ワンマイル”の医療支援を続けている。世界の400以上の武装集団と独自の対話のパイプを有し、「中立・公平・独立」の原則で医療支援の道を確保しており、拠点を閉鎖した場所は一つもないという。

 サビオ氏が一段と力を入れたのが、発効した核兵器禁止条約への加盟だ。「広島で被爆者に会い、核がいかに非人道的か聞いた。ところが、世界では再び、核が使われるかも知れない矛盾した状況にある。日本も含め、あらゆる国が迅速に加盟すべきだ」と語った。

 サビオ氏は自分と同じスイス国籍の先達で、ICRC駐日代表も務めたマルセル・ジュノー医師に言及した。彼は1945年、原爆投下後の広島に外国人医師として初めて入って医療支援をし、核兵器禁止を世界に訴えた。サビオ氏は「核による非人道的な結末は、もはや人類として対処できない。人類が管理できない不要なものは、なくすべきだ。日本は来年、G7の議長国として首脳会議を広島で開催予定だが、その大きなチャンスとして象徴的に捉え、前進させてほしい」と述べた。

 日本は来年初めから2年間、国連の非常任理事国にもなる。日本政府が「核保有国と非核保有国の橋渡しをする」と言うのならば、その本気度が試される最も重要な場面が来ている。


ゲスト / Guest

  • レジス・サビオ / Regis Savioz

    赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表 / Head of Delegation in Japan,International Committee of the Red Cross (ICRC)

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