2022年07月19日 11:30 〜 12:30 10階ホール
ボリスラバ・バタンジエーヴァ・メットカーフ国連科学委員会(UNSCEAR)事務局長 会見

会見メモ

原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)のボリスラバ・バタンジエーヴァ・メットカーフ事務局長らが7月19日に来日し、2021年3月に公表した東電福島第一原発事故に関する「2020/2021報告書」について会見した。

会見には「2020/2021報告書」刊行時に議長を務めたギリアン・ハースUNSCEAR前議長、同報告書の主執筆者であるミハイル・バロノフ博士も登壇し、質問に答えた。

 

司会 早川由紀美 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

通訳 西村好美 サイマルインターナショナル

 

写真左からハース前議長、メットカーフ事務局長、バロノフ博士。

 

 


会見リポート

「堅牢」に評価も既視感あふれる

滝 順一 (日本経済新聞社編集委員)

 原子放射線の影響に関する国連科学委員会のポリスラバ・メットカーフ事務局長は、ギリアン・ハース同委員会元議長、ミハイル・バロノフ博士とともに記者会見に臨んだ。

 3人は同委員会が2021年に公表した福島報告書2020/21について福島県民らとの意見交換のため来日した。来日は新型コロナウイルス感染症のため延期されてきた。ハース氏は報告書採択時の委員会議長でありバロノフ博士は報告書の主執筆者である。

 報告書は福島第一原発事故の放射線影響に関する1600報以上の査読付き論文を専門家がレビューした結果をまとめたという。

 報告書の結論は同委員会の13年報告書とほぼ同じだ。「被ばくに直接起因する健康被害は認められない」「被ばくによって将来起きるがんの発生は取るに足らない水準である」(ハース氏)としている。

 結論はほぼ同じだが、個人の外部被ばく線量の追加的データや放射性物質の大気拡散モデルの改良、日本固有の土壌や気候、食習慣などを考慮したことで「より現実的で堅牢な評価になった」とハース氏は述べた。

 また福島の子供たちの甲状腺がんについては高感度の超音波スクリーニング検査によって被ばくに起因しない症例が見つかっているとした。

 どれも既視感にあふれていた。日本政府や国の研究機関などの見方と非常に整合的だからだ。報告書が根拠としたデータや論文の多くは「日本発」で、専門家チームの助言に日本の研究者が関わった。同じ見解に至るのは不思議ではないが、説明が腹落ちしたとは言えない。

 会場で質問者が指摘したよう初期の被ばくは実測値がなく不確定性が大きい。集団として健康リスクは小さいと言えても特定の個人は話が別である。被ばく量は小さくともゼロではない。会見後だが、日本の団体から報告書の記述の複数の誤りを指摘され、委員会は一部を認めた。


ゲスト / Guest

  • ボリスラバ・バタンジエーヴァ・メットカーフ / Borislava Batandjieva-Metcalf

    原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)事務局長 / The Secretary, UN Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation (UNSCEAR)

  • ギリアン・ハース / Gillian Hirth

    原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)前議長、オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)長官 / Past chair, UN Scientific Committee

  • ミハイル・バロノフ / Mikhail Balonov

    放射線生物学衛生学博士、生物物理学博士、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)福島報告書専門グループメンバー(公衆被ばく線量担当)主執筆者

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