2022年07月04日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「エネルギー・円安・物価ー2022年下期経済見通し」(3) 門間一夫・みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミスト

会見メモ

 門間一夫・みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミストが世界経済、日本経済の情勢を分析するとともに、今後の見通しなどについて話した。

 

司会 小竹洋之 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

金融政策「全部やった」/財政・構造改革の出番

堀 義男 (時事通信出身)

 「異次元金融緩和では、副作用が出るか出ないかのぎりぎりまでやった」。金融政策は出し尽くしたとし、今後は財政政策と構造改革が前線に乗り出す番だと説いた。

 「賢い支出」に変身した財政が伴走しつつ、官民とも「口だけ番長」だった構造改革に本気で取り組む。金融政策は下支え役に回り、潜在成長率や競争力の引き上げを目指す政策スタンスに早く転換すべきだろう。

 潜在成長率を高める「ザ・ソリューション」はないが、人的資本や脱炭素、デジタルに取り組めば、成長機会の増大につながるとも解説した。

 一方、金融緩和による景気の改善が財・サービス需給をタイト化し、物価上昇につながるルート。これに「労働需給引き締まり-3%程度の名目賃金上昇-消費者の値上げ許容度改善」の循環入りが併行して進み、安定的な2%物価上昇を実現するというのが日銀のシナリオだ。

 だが、今後も2%目標は未達の可能性が高いとし、「中長期的にはゼロインフレに戻る可能性」を指摘した。9年超の異次元緩和の費用対効果が頭に浮かんだが、「できることを全部やった。そうでないと『日銀は口だけ』との議論が収まらなかった可能性がある」との説明が答えになった。

 確かに、異次元緩和以前の「出し惜しみ」批判、裏返せば金融政策への過剰ともいえる期待は経済界からも消えた。異次元緩和を続けても状況は変わらなかったのだから当然だ。

 むしろ、長期金利ゼロ%、短期金利マイナス0.1%に誘導するイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の副作用として挙げた、民間の資金運用の逆風となり、円安・円高両方向への為替変動を増幅させるとのデメリットが気になる。

 だが「景気がもう少し安定したら普通のゼロ金利政策に戻すといい」との提案の実現がいつになるのか分からない。懸念は深まるばかりだ。


ゲスト / Guest

  • 門間一夫 / Kazuo MOMMA

    みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミスト / Executive Economist, Mizuho Research & Technologies

研究テーマ:エネルギー・円安・物価ー2022年下期経済見通し

研究会回数:3

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