2022年06月24日 11:00 〜 12:00 10階ホール
ジュスタン・ヴァイス・パリ平和フォーラム事務局長 会見

会見メモ

22日から来日しているパリ平和フォーラムのジュスタン・ヴァイス事務局長が、帰国を前に「ウクライナ戦争:地政学はグローバルガバナンスを殺すのか?」と題して話した。

 

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

通訳 三宅薫子 駐日フランス大使館


会見リポート

ロシアの参画必要な問題も

和田 浩明 (毎日新聞社デジタル報道センター)

 地球規模の問題に対処するため各国首脳、国際機関や市民社会、企業の連携を推進する国際会議「パリ平和フォーラム」。その事務局長でフランス外務省の政策企画局長だったジュスタン・ヴァイス氏がロシアによるウクライナ侵攻の国際的影響を分析した。

 プーチン露大統領の侵攻意図は①NATO拡大への防御②領土拡大の2つの見方があるが「ここ数カ月の動きを見ると後者が本音と言われている」と解説した。これに欧州諸国がどこまで連携して対抗を続けられるか懸念はあるが、最終的にその絆は強まると楽観的だった。

 ただし、ロシアに批判的な見方は国際社会全体では共有されておらず、発展途上国で弱いという。こうした諸国は開発援助や気候変動対策支援などに不満を持ち、欧米主導の対露制裁が自国を苦しめるエネルギー価格高騰や食料調達困難の理由だとみるためだ。中国の対露姿勢には抑制的な面も見られ、国家主権侵害への警戒や露軍の予想外の苦戦、米国の圧力、共産党大会の準備などが影響しているとの見方を示した。

 ヴァイス氏の発言で興味深かったのは、ロシアとの将来的な歩み寄りの可能性に言及したことだ。海洋、気候、宇宙など大きな国際的問題で「ロシア抜きで話を進められない」と述べたのだ。一方で、グローバル化は逆行はしないが、サプライチェーンなどは友好国や地政学的価値観が共通の国だけと行うようになるとも述べ、陣営間の分断を予想した。

 ヴァイス氏はウクライナ侵攻で国家間協議を通じた問題解決が難しくなる中、国連を支え守りつつ不足を補うのがパリ平和フォーラムの役割だと強調した。マクロン大統領主導で2018年に発足して以来、サイバーセキュリティーや宇宙ゴミ対策などで、日本を含む各国からの参加者の間で共通の枠組みを提示するなど、一定の成果を出したという。


ゲスト / Guest

  • ジュスタン・ヴァイス / Justin Vaïsse

    パリ平和フォーラム事務局長 / Founder and Director General of the Paris Peace Forum

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