2022年07月05日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「エネルギー・円安・物価ー2022年下期経済見通し」(4) 加藤出・東短リサーチ・チーフエコノミスト

会見メモ

東短リサーチの代表取締役社長でチーフエコノミストの加藤出さんが、インフレ高騰下の金融政策と日本経済の課題について話した。

 

司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBS)


会見リポート

日銀、緩和出口に妙手なく

林原 久俊 (共同通信社経済部)

 日銀ウオッチャーとして知られる東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、世界的なインフレを背景に日銀が市場からの攻勢にさらされやすくなっているとして、日銀の大規模な金融緩和策の出口戦略は「非常に困難な道となる」と語った。

 日銀の6月の国債買い入れ額が、ヘッジファンドなどの海外勢に売りを仕掛けられた結果かつてない規模に上ったことを紹介した。日銀は長期金利の上限とする0・25%を死守したが、「不自然なことをやっている結果として、為替レートに影響が及んでいる」と分析する。最近の為替水準については「超円安」と表現し、日本の対外的な購買力が低下していることや、優秀な海外人材の確保が困難になる可能性を懸念する。消費者にとっても、物価上昇の打撃が「これからじわじわと本格化してくる」と警鐘を鳴らした。

 円安を受け、一部の業種で海外に移管した生産を国内回帰させる動きがあるものの、低コストを見込んだ受注に期待するのは途上国型の経済発展モデルだとして「根本的には給料を上げていけないことになる」と指摘する。人手不足を背景に米国で賃上げの動きが広まる一方、政府主導による賃上げ実現に期待する日本国内の考え方には、やや懐疑的な見方を示した。

 黒田東彦総裁の任期が来年4月に迫る中、日銀が自発的に政策を変える可能性は低く「政策変更の画期的な手法もない」と見る。リスク要因としては、急激な金利上昇に伴う金融システムへのショックや政府の資金調達コストの急上昇を挙げ、政策変更に踏み切るとすれば「円安、物価上昇への国民の怒りが高まることがポイントになる」と予想した。参院選後、政府から日銀に政策変更の要請が出てくるかどうかに注目しており、国民の不満に敏感な政府・与党幹部の金融政策を巡る発言の変化にも警戒が必要だと解説した。


ゲスト / Guest

  • 加藤出 / Izuru KATO

    東短リサーチ代表取締役社長・チーフエコノミスト

研究テーマ:エネルギー・円安・物価ー2022年下期経済見通し

研究会回数:4

ページのTOPへ