2022年06月29日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「エネルギー・円安・物価ー2022年下期経済見通し」(1) 橘川武郎・国際大学副学長

会見メモ

橘川武郎・国際大学副学長が、電力需給逼迫の背景や今後の供給の見通し、世界の資源・エネルギー情勢について話した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

日本はカーボンニュートラルで先頭に

田中 明夫 (日刊工業新聞社編集局経済部)

 経済産業省の総合エネルギー調査会委員も務める国際大学副学長の橘川武郎氏は、ウクライナ危機やカーボンニュートラルをめぐって揺れ動く日本のエネルギー情勢について、求められる戦略を解説した。

 足元でエネルギー需給を引き締めているロシア制裁に関しては、液化天然ガス(LNG)の安定調達が最大の課題と指摘。日本はLNG輸入の約9%をロシアに頼り、日本の商社が権益を持つ「サハリン2」プロジェクトは重要な役割を担う。英石油大手シェルは同プロジェクトから撤退を表明したが「日本は権益を死守すべきだ」と主張した。原油価格連動の長期契約が、高騰するスポット価格での市場調達に切り替わると、調達コストが跳ね上がって日本経済への打撃になると警鐘を鳴らした。

 エネルギーの脱ロシアをめぐっては、日本のエネルギー自給率の低さを問題点として挙げ、「国産エネルギーを増やすべきであることが教訓として示された」とし、再生可能エネルギーの導入促進の重要性を訴えた。ただ、洋上風力発電の本格的な整備には10年程度を要するほか、原子力発電は軍事攻撃の標的となるリスクもウクライナ危機で顕在化した。今冬の電力不足への対応を含め、当面は石炭火力に頼らざるを得ないとしつつ、石炭火力を廃止する時期も宣言しなければ、「国際世論の支持を得られない」と指摘した。

 また、政府が第6次エネルギー基本計画で示した2030年の電源構成見通しの問題点に言及しつつ、カーボンニュートラルに向けて研究開発が進む、アンモニア・水素の燃料利用やメタン合成技術などの有効性も解説した。既存の石炭火力やガス管を活用できるこれらの技術は、アジアなど新興国に展開できるため、「日本はカーボンニュートラル分野で先頭に立てる」と強調した。


ゲスト / Guest

  • 橘川武郎 / Takeo KIKKAWA

    国際大学副学長、教授

研究テーマ:エネルギー・円安・物価ー2022年下期経済見通し

研究会回数:1

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