会見リポート
2022年07月11日
14:00 〜 14:45
10階ホール
デイビッド・ビーズリー国連世界食糧計画(WFP)事務局長 会見
会見メモ
デイビッド・ビーズリー国連世界食糧計画(WFP)事務局長が、気候変動、新型コロナウイルス感染症のパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻により急激に悪化した食料危機の現状について話した。
司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)
通訳 池田薫/秋山賛(サイマル・インターナショナル)
★Video in English version is here
会見リポート
「食料安保への宣戦布告だ」
岩﨑 万季 (時事通信社外国経済部)
世界有数の穀物庫と呼ばれるウクライナへのロシアの軍事侵攻を受け、中東・アフリカ諸国などは深刻な食料危機に直面している。国連世界食糧計画(WFP)のビーズリー事務局長は世界の食料安全保障への「宣戦布告だ」と批判。足元ではエネルギー高騰に加え、ロシアやベラルーシから肥料の原料となるカリウムなどの供給は停滞。食料価格がいつピークを迎えるのか、現状では予測不可能であり、長期的に食料価格が高止まりし、食料不足に苦しむリスクが高まっていると懸念を示した。
ウクライナでは小麦などが収穫期を迎えているが、穀倉が不足しており、ビーズリー氏は輸出経路の確保は「今解決しなければならない問題だ」と危機感をあらわにした。例えばエジプトは小麦の80%をウクライナやロシアから輸入しており、深刻な食料不足に直面する国々への支援強化が必要であり、消費国も生産国も「保護主義(の誘惑)に負けてはならない」と訴えた。
一方、ビーズリー氏は来日前に20カ国・地域(G20)外相会合が開かれたインドネシア・バリ島でロシアのラブロフ外相と会談したと明かした。ロシア軍の黒海封鎖でウクライナの穀物輸送が停滞している問題について解決の道を探っており、水面下で交渉が行われてきたと説明。代替ルートとして、トラックなど陸上輸送への切り替えを模索しているが十分ではなく、ウクライナ南部オデッサ港の開港への突破口が「数週間で開かれることを願う」と述べた。
ビーズリー氏の記者会見の数日後には、ロシアとウクライナ、トルコと国連の4者会談が実現した。詳細は不明だが輸送船の航行の安全性を確保するための「調整センター」を設置することで合意した。
新興国では物価上昇に苦しむ貧困層の不満が高まり、抗議デモが増え、政情不安に陥るリスクに直面している。欧州でも賃上げを求めるストライキが相次ぐ。日本にとっても対岸の火事ではない。
ゲスト / Guest
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デイビッド・ビーズリー / David Beasley
国連世界食糧計画(WFP)事務局長 / Executive Director, The World Food Programme (WFP)