2022年06月09日 16:00 〜 17:00 9階会見場
「ウクライナ」(15) ミコラ・チェルノティツキー・ウクライナ公共放送「ススピーリネ」会長

会見メモ

戦火にあるウクライナで取材・放送を続ける公共放送「ススピーリネ」のミコラ・チェルノティツキ―会長が現地からリモートで会見した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 森岡幹予(サイマル・インターナショナル)

 

※ご案内の際、ゲストの名前の表記を「チェルノティツイキ―」としていましたが、ゲストの発音にしたがい「チェルノティツキー」に変更しました。


会見リポート

戦況伝えつつ将来見据え

大内 佐紀 (企画委員 読売新聞社調査研究本部主任研究員)

 「水や食べ物など生活必需品の入手方法といったサバイバル関連情報を伝えること。何が起きているのか、真実を伝え続けること」――。ミコラ・チェルノティツキー・ウクライナ公共放送「ススピーリネ」会長は、戦時下での同放送の使命に、この2つを挙げた。

 ススピーリネはロシアによるウクライナ侵攻後、24時間体制でテレビ、ラジオ、SNSを通じた報道を続ける。国民にとっては、ほぼ唯一のニュース源だ。開戦直後にすかさず本社機能を首都キーウから複数の地方拠点に移すなどし、絶え間ないニュース発信が可能になっているという。

 激しい攻撃を受ける中での報道は困難を極める。会長の一番の心配事はロシアの支配地域に残された記者の安全だ。「助けたくても、そうできない」という現実がある。それでも、占領地からも何とか真実を発信しようとする記者がいる。

 戦時体制下、国防省の検閲がある。例えば、ウクライナ軍の戦死者数は伝えられない。ロシアの攻撃による被害状況も、報道できるのは8時間後だ。

 だが、「今の軍事作戦に関する検閲が、政治的なものになることは許されない。我々とロシアの違いは、言論の自由と独立したメディアが存在していることだから」と力をこめた。

 社員の半分に当たる約2000人が時短を余儀なくされ、300人は国外に逃れた。72人は兵役のため離職した。広告収入はゼロ。国の補助金も大幅カットだ。

 それでも最近は戦況報道だけでなく、子ども向けの教育番組や国民の癒やしとなるような音楽番組にも力を入れているという。

 「戦争が終わったら、今回の報道を大局的見地から検証する」「5年後の社のあり方について、幹部で協議を始めた」――。身の安全のため、リモート会見の場所は伏せられた。そんな中、次々と出てきた将来を見据えた前向きな発言に心打たれた。


ゲスト / Guest

  • ミコラ・チェルノティツキー / Mykola Chernotytskyi

    ウクライナ / Ukraine

    ウクライナ公共放送「ススピーリネ」会長 / Head of the Managing Board, Public Broadcasting Company of Ukraine

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:15

ページのTOPへ