2022年06月03日 14:30 〜 16:00 10階ホール
「ウクライナ」(14) 兵頭慎治・防衛研究所政策研究部長

会見メモ

ウクライナの戦況と政治プロセスの分析を続けている兵頭慎治・防衛研究所政策研究部長が、ロシアのウクライナ侵攻から3カ月の現状や今後考えられるシナリオについて話した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

ロシアの猛攻撃、年内まで続く可能性

宮坂 一平 (時事通信社解説委員)

 ロシアによるウクライナ軍事侵攻から100日が経過し、この戦争の実相と今後の見通しについて、ロシアの外交、政治、安全保障の専門家としての視点で状況分析した。

 ウクライナでは東部ドンバス地方でロシア軍が攻勢に出ているが、2月24日の侵攻はなぜ生起したのかを改めて考察。過去に侵略された歴史や、冷戦の敗者として旧ソ連崩壊後、米国の一極世界で圧力を受けてきたとの「被害妄想」が過剰な国防意識を生んだと論じた。

 そのため国境の外側、ウクライナを含む旧ソ連という「影響圏」がないと安心できない発想が支配的だと指摘。ウクライナは歴史的にロシアと同一空間であるべきだとの思いと相まって、プーチン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)が東方不拡大を法的に担保できないなら、力ずくで影響圏に置こうと判断したと解説した。

 極めて説得力がある論だし、西側関係者も認識を共にしていると推察するが、そうであればなぜ侵攻を回避できなかったのか。民間人への残虐行為、街と生活を破壊し尽くすロシア軍の作戦。日々情報に接するたびに考え込んでしまう。

 戦況の変化に伴い米国はウクライナにより攻撃的な武器供与を行っているが、停戦に向けた具体的な努力は見られない。戦闘継続と経済制裁によるロシア弱体化を本気で企図しているのではないかとの疑念が湧く。

 では、戦争の出口は。兵頭氏は、東部2州の完全制圧をプーチン大統領が断念することはできないが、考慮材料としてロシア軍の構造的問題、国内世論の反発、2年後の大統領選を挙げ、「猛攻撃のレベルを年内まではやり続ける可能性がある」と述べた。さらに命が失われ、ウクライナの国土が荒廃し、エネルギーや経済、食糧の問題がグローバルに深刻さを増す恐れがあることを予感させる。


ゲスト / Guest

  • 兵頭慎治 / Hyodo Shinji

    日本 / Japan

    防衛研究所政策研究部長 / Director, Policy Studies Department, National Institute for Defense Studies

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:14

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