2022年06月24日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「ウクライナ」(16) 君島東彦・立命館大学教授、元日本平和学会会長

会見メモ

ロシアによるウクライナ侵攻からちょうど4カ月。

立命館大学教授で日本平和学会元会長の君島東彦さんが、平和学の視点からロシア・ウクライナ紛争を解説した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

「包摂の失敗」が招いた侵攻

軍司 泰史 (共同通信社編集委員)

 元日本平和学会会長でもある君島東彦・立命館大教授の会見を聞いていて、四半世紀前のある光景を思い出した。

 1997年5月、パリで開かれた北大西洋条約機構(NATO)とロシアの「相互関係、協力、安全保障に関する基本文書」調印式だ。ロシアのエリツィン大統領は「合意は理性の勝利」と述べ、NATO加盟国に向けているロシアの核ミサイルの照準を外すことを表明、記者室にどよめきが起きた。

 「戦後のヤルタ体制の痕跡が消えた」(シラク・フランス大統領)と多くが思った式典を、今思い起こすと昔日の感がある。ロシアのウクライナ侵攻は、ロシアとNATOを再び激しい緊張関係に引き戻した。97年に見えた光明がかくも暗転した原因は何だろうか。

 君島教授は、NATOの東方拡大やロシアの立憲主義の失敗、プーチン大統領の帝国意識、さらに新たな世界秩序への野心などを挙げつつ、「ロシアが安全保障上の不安感を抱かないですむ程度まで、同国を欧州秩序の中に包摂することに(欧米諸国が)失敗したからだ」と指摘した。さらに「ロシアの包摂はこれからもわれわれの課題であり続ける」とも。

 そのカギを握る組織の一つとして、君島教授が挙げたのが欧州安保協力機構(OSCE)である。「安全保障の不可分性」を基本とするOSCEには、ウクライナを含む欧米諸国のほかロシアも踏みとどまっている。おそらくウクライナとつなぐ組織として加盟に意義を見いだしているのだろう。

 ロシアとしてもNATOと永久に敵対を続けるわけにはいかない。長期的には対話せざるを得ない。冷戦終結直後の90年代を思い起こせば、「対話は可能なはずだ」と君島教授は述べる。今後ウクライナでの停戦合意が成立した場合、今度こそ「国際秩序にロシアを安定的に位置付けなければならない。私たちの永遠の課題だ」と指摘した。


ゲスト / Guest

  • 君島東彦 / Akihiko KIMIJIMA,

    立命館大学教授、元日本平和学会会長 / Professor, Ritsumeikan University

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:16

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