2022年06月01日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「こども家庭庁」(4) 奥山眞紀子・社会福祉法人子どもの虐待防止センター理事、高橋恵里子・日本財団公益事業部部長

会見メモ

小児精神科医で日本子ども虐待防止学会の前理事長である奥山眞紀子さん(写真右)、日本財団で社会的な養護下にある子どもたちの支援活動に携わってきた高橋恵理子さんが登壇。虐待や貧困など子どもを取り巻く現状を説明するとともに、子どもの権利を守るための子ども政策のあり方などについて話した。

 

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

 

社会福祉法人子どもの虐待防止センター

日本財団 子ども基本法WEBサイト


会見リポート

子どもの声聞く大人が必要

石田 敦子 (毎日放送東京支社報道部次長)

 国会で、今まさに「こども家庭庁設置法案」「こども基本法案」が審議されている。「こども家庭庁」の設置は来年4月の見込みだが、この仕組みがきちんと機能するためには「こども基本法」の理念がしっかり理解されなければならない。

 いじめや虐待、貧困など子どもが置かれている状況は厳しさを増し続け、行政の対応に批判が集まることも多い。これまで欠けていた視点として奥山さん、高橋さんが強調するキーワードは「子どもの権利」である。1994年の国連子どもの権利条約には「児童は特別な保護及び援助についての権利を享有する」等、子どもが愛情を受け様々な保護のもと成育されることは権利であると記されている。日本もこの条約を批准したが、現行法で足りるとして政府は国内法の整備を行わず、「児童の権利」が児童福祉法に記されたのは2016年の改正の際だった。そのため、奥山さんによれば、虐待など子どもが被害の当事者である事案でも、公的機関は「親の相談に乗る」といった大人を主体とした対応をしてきたという。ようやく今回の「こども基本法」であらゆる場面における子どもの権利が包括的に定められることになる。

 さらに、こうした子どもの権利を守るために「子どもコミッショナー」の存在は欠かせないと二人は断言する。選挙権を持たず自らの権利を主張できない子どもにとって、行政機関から独立し、子どもの声を聞き、その権利実現を目指す大人が必要なためだ。しかし、自民党が提出した基本法案からは「子どもコミッショナー」は削除されている(公明、立憲案には記載)。海外では実施されていても日本では初めての仕組みだけにまだまだ理解が進んでいない役割ではあるが、奥山さんは「子どもの声を聞く力を持った大人が必要」と訴える。子どもにとっての最善の策を考えるのは大人の義務であることを改めて胆に銘じた。


ゲスト / Guest

  • 奥山眞紀子 / Makiko OKUYAMA

    社会福祉法人子どもの虐待防止センター理事

  • 高橋恵里子 / Eriko TAKAHASHI

    日本財団公益事業部部長

研究テーマ:こども家庭庁

研究会回数:4

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