会見リポート
2022年05月20日
16:30 〜 17:30
10階ホール
ラファエル・グロッシ( Rafael Mariano Grossi )IAEA事務局長 会見
会見メモ
5月18日に来日したラファエル・マリアーノ・グロッシ IAEA事務局長が、帰国を前に会見。ウクライナ情勢や、北朝鮮・イランの核問題、東京電力福島第一原子力発電所で予定される処理水の海洋放出などについて話した。
グロッシ事務局長は軍縮や不拡散の専門家。アルゼンチン外務省入省後、化学兵器禁止機関(OPCW)官房長、IAEA官房長、在ウィーン代表部アルゼンチン大使、原子力供給国グループ(NSG)議長などを経て、2019年12月から現職。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
通訳 西村好美 サイマルインターナショナル
会見リポート
処理水 懸念に応える努力を
山野 拓郎 (朝日新聞社科学みらい部)
国際原子力機関(IAEA)事務局長として2度目の来日となったラファエル・マリアーノ・グロッシー氏が、帰国を前に会見した。グロッシー氏はIAEAが医学や農業など幅広い分野で国際社会に貢献していると紹介。「イラン、ウクライナ、北朝鮮、気候変動、食糧安全保障。こういった分野すべてに重要な役割を果たしつつある」と述べた。
実際、国際社会におけるIAEAの役割は重要度を増している。
ロシアによるウクライナ侵攻では、ロシアが原発を攻撃する事態になった。ウクライナについて「前例のない状況になってしまっている」との見方を示した上で、自身が2度ウクライナ入りしたことなどをあげ、IAEAが「断固たる行動をとってきた」と強調。ロシアの支配下にあるザポリージャ原発について、IAEAの査察官や原子力の専門家によるアクセスを求めて、ウクライナ、ロシア両国と協議していることを明らかにした。
北朝鮮問題に関しては「重大な懸念を有している」と述べた。2009年にIAEAの査察官が北朝鮮から追放されたことを念頭に、「09年当時と22年現在の北朝鮮は全く違う。核開発プログラムがありとあらゆる分野で進んでいる。ウラン濃縮施設が増え、使用済み核燃料の再処理能力を拡張している」と分析。「政治的な合意が成立すれば、いつでも北朝鮮に戻る用意はできている」との考えを示した。
グロッシー氏は来日中、東京電力福島第一原発を視察した。同原発で計画される処理水の海洋放出に対する地元の懸念の声に対し、計画は国際基準に合致するとの見解を示した上で、「科学や統計数字では解決できない問題もある。地元社会と積極的に関わり続けることが大切。できる限りの努力を行って懸念の声に応えていくべきだ」とした。「なぜなら、事故は起こってしまったわけで、それを変えるというわけにはもういかない」との指摘は重い。
ゲスト / Guest
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ラファエル・マリアーノ・グロッシ / Rafael Mariano Grossi
国際原子力機関(IAEA)事務局長 / Director General of the International Atomic Energy Agency