2022年06月10日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「科学技術立国」(4) 永田恭介・国立大学協会会長

会見メモ

世界トップレベルの研究力をめざす大学を10兆円規模の大学ファンド(基金)で支援する国際卓越研究大学法が5月18日に成立した。

国立大学協会会長で筑波大学学長の永田恭介さんが登壇。国立大学の研究力について、この間の大学改革の流れ、世界との比較なども踏まえ解説。その上で、10兆円ファンド・国際卓越研究大学制度への期待と課題、今後進められる制度設計において求める点について話した。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

国立大は国や世界をまもる存在

竹田 忍 (日本経済新聞社編集委員)

 国立大学卒業生の60~70%が県内・地域内に就職し、大学発ベンチャー数上位20校のうち13校は地方国立大が占め、医学部付属病院は地域に高度医療を提供している、という話にひかれた。大規模災害時の受け入れ拠点としての役割も大きい。地方国立大が地域活性化に貢献している側面はもっと高く評価されるべきだろう。

 研究環境については「科学研究費補助金(科研費)を増やして欲しい。(現状は)微増だが目に見えるぐらいに」と語った。人件費や光熱費に使う運営費交付金の拡充も「1丁目1番地」に位置付けた。日本の研究力を高めるために予算の裏付けが必要なのは自明だ。

 自民党国防議員連盟は防衛技術の研究開発費を大幅に拡充するよう求めている。軍事研究に関わる予算について問うと「アカデミアは軍事研究を絶対にしない」と述べたが「軍事費用を使わないとは言っていない」と付け加えた。「個人的見解」と前置きしてから「国の予算は、わが憲法がある限り軍事予算ではない」と解釈してみせた。

 最先端技術には軍事にも民生品にも利用できるデュアルユース(軍民両用)がある。国大協の中には色々な意見があり、デュアルユースに反対する声もあるようだが、「デュアルユースを禁じれば逆に学問の自由を損なう」との考えも示した。永田恭介・国立大学協会会長は分子生物学が専門。立ち話では「1週間あればスペイン風邪のウイルスを作れる。危険ではあるが、この技術がなければワクチンもできない」と語った。科学技術の二面性を象徴する言葉だった。

 記者会見最後の揮毫では「国を護送する」と書いた。「国立大学は長年、『甘ったれた護送船団方式で来た』と言われてきたが違う。国や世界をまもる存在だ」と説いた。その志やよし。


ゲスト / Guest

  • 永田恭介 / Kyosuke NAGATA

    国立大学協会会長

研究テーマ:科学技術立国

研究会回数:4

ページのTOPへ