2022年04月26日 11:00 〜 12:00 9階会見場
「ウクライナ」(12) 門馬秀介・国境なき医師団医師

会見メモ

ウクライナ東部のマリウポリから約240kmのドニプロとザポリージャで現地の医療機関スタッフへのトレーニングや避難所の視察などを行った救命救急医の門馬秀介さんが、現地での活動について話した。

門馬さんは3月21日にウクライナに入り、4月3日にポーランドへ出国、4月17日に帰国した。

 

司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事・事務局長


会見リポート

心の苦しみに長い支援が必要

和田 浩明 (毎日新聞社デジタル報道センター)

 ロシアが侵攻を続けるウクライナでは、地元の医療者を海外の医療ボランティアが支援する。「国境なき医師団(MSF)」もその一つだ。

 救急救命医の門馬秀介さん(48)はMSFに派遣され、ウクライナ東部ドニプロ、ザポリージャなどに3月下旬から4月初旬まで滞在。戦闘で大量に負傷者が出た場合の医療対応の研修や、避難者の移動診療、爆撃に備えた地下病院の設置準備などにかかわった。

 MSFは国内各地の医療機関に医薬品、避難民向けに毛布や防寒具を提供する。傷病者を比較的情勢が安定した西部に送る「医療列車」も運用し4月中旬までに270人を運んだ。ICU設置列車の配備も進める。

 門馬さんによると戦闘が続くウクライナ東部の医療施設の多くは戦傷者治療にシフト。高齢者や障害者、慢性疾患患者や妊産婦、子どもら弱者にしわ寄せが来ているという。

 現地の様子を見て重要性を痛感したのが、避難者に対するメンタルケアだ。「毎日のように空襲警報が鳴り、戦闘で親を亡くした子ども、孫を失った老人もいる。睡眠障害や激しい感情的行動を見せる人もある。心の苦しみには専門家の長いサポートが必要になる」。安定して生活できる場所も必要だと強調した。

 滞在中はすぐに逃げられるよう、衣服を着たまま眠り、枕元にパソコンや長期保存がきく黒パン、飲料水などを入れたバッグを置いていた。救命医なので戦闘地域で直接治療をしたかったが入れなかったものの、「先方の希望を聞き必要とされていることをやるよう心がけた」という。

 戦闘に終わりは見えない。ロシア軍による病院への攻撃が報じられ、化学兵器、核兵器の使用に対する懸念も根強い。門馬さんは日本からの支援として「状況を知り、現場の医療や国の復興のためサポートすることが重要だと思う」と話した。


ゲスト / Guest

  • 門馬秀介

    国境なき医師団医師

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:12

ページのTOPへ